芸能界へメッセージを出せたことの大きな意味
――注意処分というのは、処分のレベルとしてはどれくらいのものなんでしょう。
杉本 独禁法違反で一番強いのは排除措置命令。その次が警告で、注意処分はその次です。ですからある意味でそんなに強い処分ではないのですけれども、芸能界という場所においても「独禁法違反につながるおそれがある行為が存在する」とメッセージを出せた意味は大きかったと思っています。公取は市場における違反行為を摘発するだけが目的ではありません。あらゆるマーケットで公正な競争が行われるよう、誰かが思いのままに独占支配的な経済行為ができないよう、注意喚起する機関であると思っていますから、結果として反響のある発信ができたことは、効果的だっただろうと個人的には思っています。
――「ついに公取がジャニーズにメスを入れた」的な報道もあったわけですが、内外の反応で印象に残っているものはありますか?
杉本 ええ、いろんなコメントが寄せられました。「公正取引委員会、よくやってくれた」というものも多かったですね。世の中の関心を集めたという実感を持ちました。それから、その後テレビ番組を見ていますと、独立された方をいろんな場所で見かけるようになりました。活躍する場が増えているんだろうと感じていまして、タレントの方、俳優の方などが不当に活動を制約されない環境が、テレビ、芸能をめぐる世界で整備されたようにも思っています。
ジャニーズ事務所に注意したことの波及効果
――「SMAP解散騒動」の後には、女優の能年玲奈(現・のん)さんが事務所との契約終了後、事務所の許可なしに「能年玲奈」の名前を使用できないなど、不当な扱いを受けていたことが明らかになり問題にもなりました。
杉本 その問題は関知しておりませんけれども、私どもがジャニーズ事務所に注意したことの波及効果として、タレントの活動を制約する動きに対して社会があらためて注目しはじめている印象は持っています。そして企業――芸能界でいえば芸能事務所が自主的にコンプライアンスに則った行動をするようになっているとすれば、公取のなすべき注意喚起が効果を持ったのだと思っています。