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元SMAPの3人めぐって…公正取引委員会がジャニーズ事務所を「注意」した真意とは

杉本和行元公取委員長インタビュー #1

――最近になってEUはデジタル市場法、デジタルサービス法を発表しました。問題が起きた後に制裁金を課す事後規制から、あらかじめ「これはいけない」と決める事前規制へと、さらに厳しさを増した格好です。日本の法整備はどうなっていくと見ていますか?

杉本 日本では巨大IT企業への規制を強化する法律が成立しましたが、あくまで通販サイトやアプリストアにおけるプラットフォーマーと出品者との間に透明性を担保することが目的になっています。ですから「これはいけない」という規制ではないわけですが、これまで以上に各関係省庁と公正取引委員会が連携していく必要が出てきたと感じています。

 また、海外のプラットフォーム企業が日本市場で儲けているのに、日本の法人税が課せられないという不公平の問題も早急に決着させなければなりません。デジタル課税についてはOECDを中心に様々な案が国際的に議論されています。競争基盤の平等化、「レベル・プレイング・フィールド」というんですが、この環境を整えることが喫緊の課題でしょうね。

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国際競争市場が整備されなければイノベーションは生まれない

――杉本さんは1974年に旧大蔵省に入省され、財務省の事務次官を経て2009年に退官されました。その間、経済はグローバル化の一途をたどったわけですが、とりわけ公取委員長時代のGAFA規制の課題意識につながるような経験はありましたか?

杉本 ブリュッセルにあったEC(欧州共同体)日本政府代表部に一等書記官・参事官として赴任した時期があります。30代後半からの3年ほどでしたか。ちょうどその頃は欧州市場統合が一つの合言葉でして、ヒト・モノ・カネ・サービス全部が市場を自由に動けるようにしましょうと、ヨーロッパ全体がダイナミックな動きを見せていたんです。

 市場統合で重要なのが、先ほど申し上げたレベル・プレイング・フィールドの確保でしてね。競争基盤が整備されていく流れを目の当たりにしていた感覚はあります。もっとも当時は「競争政策って何じゃろう」と思っていたんですけどね。今となっては公正取引委員会というのは、経済政策の強力な武器を持つ官庁なのではないかと実感するに至りました。独占支配のない、自由公正な国際競争市場が整備されなければイノベーションは生まれないし、経済は動きませんからね。(#2に続く)

写真=釜谷洋史/文藝春秋

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