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賠償判決で「バイデン政権に批判される」、“第2の慰安婦裁判”は延期…韓国も頭が痛い理由

2021/01/13
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 元慰安婦と遺族が起こしていた裁判で、8日に続き13日に予定されていた一審判決が突然、延期された。

 延期されたのは、2016年12月28日、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、前挺身隊問題対策協議会)が支援する元慰安婦とその遺族ら20人(現在)が日本を相手に1人当たり2億ウォン(約1900万円)を求めて提訴していた裁判の一審判決だった。

©文藝春秋

 8日に、ナヌムの家(社会福祉法人「大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」)が支援する元慰安婦とその遺族12人が日本を相手に1人あたり1億ウォン(約950万円)の損害賠償を求めていた裁判(2013年8月和解調停申請後、2016年1月裁判に移行)で原告側の勝訴となり、13日の判決の行方が注目されていたが、3月24日に口頭弁論を再開するという。

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審理を重ねる必要があると判断

 ソウル中央地裁は「事件の判断のために追加の審理が必要だと判断した」(京郷新聞、1月11日)と説明しているが、「おそらく8日とは異なる判決内容となったため、審理を重ねる必要があると判断したのではないか」(中道系紙記者)という見方もある。

 正義連はすぐに、「判決2日前になってなんの説明もなく口頭弁論を再開することはとうてい納得し難い。判決を待っている原告が他界していく現実において憲法と国際人権に基づいた判決が迅速に出されることを望む」という声明を出した。

11月11日の口頭弁論後、記者に取り囲まれた元従軍慰安婦・李容洙(イ・ヨンス)さんと右は裁判を担当している「民主社会のための弁護士会」のイ・サンヒ弁護士(筆者提供)

 この裁判でも最大の争点になっていたのは、日本が主張していた「主権(国家)免除」が適用されるか否か、だった。「主権免除」とは、ある国の裁判所が他国を訴訟の当事者として裁判を行うことはできないというもので、国際慣習法では原則とされてきた。日本政府はこの「主権免除」の立場から裁判が成り立たないとして、ソウル中央地裁から送られた訴状の受け取りも拒否してきた。

日本が控訴しなければ判決が確定することに

 しかし、2019年に入ると、ソウル中央地裁が行った公示送達とみなす手続きにより送達の効力が発生し、昨春から口頭弁論が始まった。

 8日、原告側の勝訴となった判決には、韓国メディアは保守進歩問わず、判決を評価する内容でいずれもトップ扱い。「慰安婦被害者、30年ぶり日本政府に勝訴」(中央サンデー、1月9日)「裁判所 慰安婦運営 反人道的犯罪 日本政府へ裁判する権利はある」(東亜日報、1月9日)「慰安婦証言30年ぶり 日本は賠償せよ 韓国裁判所初の判決」(ハンギョレ新聞、1月9日)などと報じた。

 日本政府は8日の判決後すぐに遺憾の意を表明したが、控訴はしないとしている。控訴期間は2週間とされているので、このまま日本が控訴しなければ判決が確定することになる。判決が確定すれば、次は執行段階へと移り、執行対象を原告側が裁判所に再び申請し、認容を求めることになる。