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賠償判決で「バイデン政権に批判される」、“第2の慰安婦裁判”は延期…韓国も頭が痛い理由

2021/01/13
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執行対象については「検討中」

 執行の対象となるのは韓国内にある日本政府の資産だ。問題は、韓国内に執行対象となる日本政府の資産がどれだけあるか、という点。韓国内には日本大使館や領事館などの日本政府の資産があるが、どれも外交関係に関する「ウイーン条約」で「公館不可侵」とされていて対象から外れる。そのため、韓国では日本大使館の敷地や駐韓日本大使の自動車、大使館、領事館内の備品などが対象として挙げられていたが、こちらも「公館不可侵」により対象外だ。

 かつて韓国内の米軍基地で働いていた韓国人被雇用者が、不当解雇を不服として提訴した裁判で勝訴し、執行された際は、米国政府が韓国の銀行にプールしていたビザの手数料が執行対象となった。最終的に米国政府がこれを認めたため、賠償金が支払われたケースで、今回も同じように「公館不可侵」とはならない対象を探す必要があるといわれている。

 8日に判決が出た裁判を弁護している金江苑弁護士は、執行対象について「検討中」と返答した。

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©️AFLO

 8日の判決で、ソウル中央地裁は、「主権国家に対する判断」についてこう記している。一部抜粋しよう。

「この事件の行為(占領中だった朝鮮半島内で原告たちを誘拐、拉致し、慰安所に監禁したまま常時的な暴力、拷問、性暴行に露出させた行為)は日本帝国により計画的、組織的に広範囲にわたり恣行された反人道的な犯罪行為として国際的な強行規範に違反したものであり当時、日本帝国により不法占領中だった韓半島(朝鮮半島)内で我が国民である原告たちに恣行されたものとして、たとえこの行為が(戦時中の)国家の主権的行為であるとしても主権免除を適用することはできず、例外的に大韓民国の裁判所に被告(日本)に対する裁判権があると見る」

「(その根拠として)国家(主権)免除理論は恒久的、固定された価値ではなく、国際秩序の変動により継続して修正されている」

「国際司法裁判所(ICJ)は2012年2月3日、ドイツとイタリアの事件で国家免除に関する国際慣習法は、武力衝突の状況で国家の武装兵力および関連機関による個人の生命、健康、財産の侵害に関する民事訴訟手続きにも適用されるという趣旨の判決を宣告したこともある」

 今回の判決に際して担当判事は原告側に裁判に関連する資料提供を積極的に働きかけていたと伝えられた。判決にあるドイツとイタリアで行われた訴訟については「主権免除の原則を認定したICJの決定文が不利になるとして提出されなかったことに対し、(判事は)『ICJが国家(主権)免除の原則を認定したが(これに反論した)少数意見を見れば原告側の法理主張のひとつの大きなツールになり得る』と話した」と報じられている(東亜日報、1月9日)。