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「永久に刑務所に入れてほしい」
「妹は、全身痙攣でふらふらとホームを歩いて、柱に倒れかかったそうです。それを見て、たいへんだと近付いてくれたそうです。その時には、口から泡をふいて、全身が痙攣して、てんかんの発作のようだったと──」
それから現場にいた人たちが駆け寄り、みんなで心臓マッサージをする。それでも、一命を救うことはできなかった。そんな妹の死の場面を知って、姉は言う。
「本当に苦しかったろうな、と思います」
しかし、そんな姉は、決して土谷に死刑を望むとは言わなかった。
「宗教というのは、人を和やかにし、人の命を大切にするものです。それを、宗教を隠れみのに、私たちの常識では考えられないことをやりたい放題。本当に許せない。調べが進んで、いろんなことがわかっても、まだ黙秘したり、のらりくらり。宗教家として信念を持ったのなら、しゃべることはできるはずなのに。同じ宗教家として妹が犠牲になったのなら、本当に妹が可哀想です。やりきれないです」
カトリックだった妹を慮っての証言だったのだろう。土谷の罪に触れても、
「教団の中では化学の専門家であったと聞いています。最初にサリンを作った人とも聞いています。サリンは、人が作らないと自然界には存在しないものです。人殺し以外には使わない。それがなければ、妹も死ななかった。許せなかった」
それでも、最後に処罰感情を聞かれて、こう答えるのだった。
「人の命をなんとも思わない人と、同じ世界には住めません。いっしょに生きていることができません。永久に刑務所に入れて、私たちの社会に出さないで欲しいと思います」