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女性を指名したいのにと思うけど…なぜ女性美容師は圧倒的に少ないのか

2021/01/19
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美容師の離職率

 多くの若手美容師は、一人前になるまでに長く続く下積み、低賃金、毎日の長い拘束時間、華やかに見える理想と現実のギャップなど、過酷な労働環境での仕事を強いられています。それは今の20代であっても変わりません。

 詳しくはこちらで解説しています。

©️iStock.com

 また美容業界は体育会系の要素が色濃く、「しゃにむに働く」事を強いられ、男女関係なく、多くの若手は体調不良や手荒れなどに悩まされます。

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 僕が新卒で勤め始めた美容室では、忙しすぎて営業中にトイレに行く暇がなく、膀胱炎で悩む女性スタッフもいたほどでした。その女性スタッフもそれが当たり前のことのように振る舞っていたし、僕自身当時は「そういう世界なんだ」と思い込んでいましたが、今考えれば、そんな働き方で続くわけがありません。

 その為多くは20代のうちにドロップアウトしていき、結婚、出産などを理由に30代以降の女性美容師は激減します。今の30代以降の女性美容師が少ない理由は、ここにあります。

十数年前までは、「辞める」か「出産しない」か二択だった

 美容師に限らず、かつての仕事観では女性は結婚、出産をきっかけに退職、引退する人が多かった。出世欲、上昇志向を持たない女性にとっては、こと美容師という仕事は復帰するにはハードルが高いのです。逆に長く美容師を続けられる女性には、キャリアウーマン的な志向の方が多いです。

 

 特に難しいのは、出産後の職場復帰です。長期離脱による客離れ(業界では「失客」と呼びます)は必至で、復帰後は大きく売上を落とします。お客様側が「あの美容師さんでなければ、別を探そう」と思うのは自然なことです。

 そして、子供が大きくなるまでの間は保育園や学校、学童保育などに預ける為、フルタイムでは働けません。

 必然的に予約の受付時間も狭まる為、例えば自分を指名してくださるお客様が夜にしか来店できない、となると予約を受けることができない。すると、また失客してしまいます。

 なので、結婚、出産以前に「それでも貴方に切って欲しい」と言ってもらえる顧客をたくさん獲得していて、既に美容師として成功している女性しか、美容師としての復帰は難しかったのです。ですが男女問わず、20代のうちにお店の稼ぎ頭になれる程の美容師は、一握りです。