コロナ下の日本医療
ここまで紹介したような基本的なデータを踏まえた上で、新型コロナ第三波に襲われている日本の現状を見てみよう。
以下に厚生労働省が毎週、発表しているデータを示す。1月5日に公表された昨年12月30日時点での病床の状況だ。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000714776.pdf
これを見ると、PCR検査の陽性者数が最も多い東京都では重症患者の病床使用率が76%。軽症患者も含めた入院者の病床使用率をみると61%に達している。なるほど、この数字だけをみると「医療崩壊は目前だ」という声にも説得力がある。
しかし、ここで目を病床数に向けてもらいたい。
東京では新型コロナ感染者のために確保された病床数が4000。そのうち重症者向けは500床である。一方、日本医師会が提供する地域医療情報システムによると、東京都には一般病床が8万以上ある。
http://jmap.jp/cities/detail/pref/13
当然のことではあるが、病床があればいいというわけではない。繰り返すが医師や看護師がいなければ治療はできないからだ。また、すべての一般病床を新型コロナの感染者に向けて転用できるわけではないだろう。
だが、豊富な医療資源を抱える東京都において、新型コロナの感染者へ対応する病床を、これ以上、増やすことはできないのだろうか。
機動性のあるスウェーデン
では日本より医療資源がとぼしく、しかも感染者数の多い国はどのように対応しているのか。森田医師が記事で挙げているのはスウェーデンの事例である。
前掲のCDC(疾病対策予防センター)のデータベースによると、1月6日の時点で、直近の30日間では感染者の規模は以下のような差がある。
スウェーデン 人口10万人あたりの感染者 1736.1
日本 人口10万人あたりの感染者 71.9
「文藝春秋」2月号において森田医師は、スウェーデン在住の医師がTwitterで紹介している資料を示している。
https://twitter.com/AyakoMiyakawa/status/1326898179539865601
定時記者会見。
— 宮川 絢子 /外科医 in Sweden / 双子ママ(みやかわ あやこ) (@AyakoMiyakawa) November 12, 2020
スウェーデンのICUのキャパシティーと入院者数推移。キャパシティーは約2倍まで増やしたが、第一波の収束とともに縮小。
薄茶はコロナ以外、オレンジはコロナ。実線はキャパシティー。
現在、ICU入院中の3割がコロナ 感染者。これから増えれば、再度キャパシティーも増やす必要あり。 pic.twitter.com/okMusITAD8
これは昨年11月までの段階のデータだが、入院者の数に合わせて、ICUの病床数を機動的に増減させていることが分かる。
あわせてスウェーデン国営放送が紹介している手術件数に関するデータもみてみよう。(※Riketが全国/elektivが待機手術/akutが緊急手術 )
https://www.svt.se/datajournalistik/corona-uteblivna-operationer
このグラフが示すように、緊急を要する手術の数は大きく増減していないが、緊急ではない待機手術の数は最大で80%以上減っているのが分かる。
森田医師はそうしたファクトを踏まえて、日本の問題点を指摘する。