「あいつをクビにしないと俺は絶対に入金しないぞ!」
言われるがままに立たされていると、早速近くのオペレーターの手が上がった。
「上司を出せって言ってます!! 電話代わってください」
(上司って私のこと!? まだ入社して半年そこそこなのに!?)
そう言うとオペレーターさんは、私の手にヘッドセット(ヘッドフォンとマイクが一体となっているもの)を押しつけた。
そうなのだ。電話をしているオペレーターはパートやアルバイトの非正規雇用の契約で働いている。なので、お客さまに「上司を出せ!」と言われたら、正社員である私たちが対応するのである。私が1年目の新入社員でも、オペレーターさんが勤続数年のベテランでも、ここでは私が「上司です!」と名乗って電話に出なければならない。
「お、お電話代わりました、じょ、上司のN本と申します……」
「何なんだ、さっきのオペレーターの態度は!! あいつをクビにしないと俺は絶対に入金しないぞ!」
「え、ええっー!?」
入金困難なお客さまとの交渉
私が新しい部署ですることになったのは、オペレーターが対応できないクレームや入金困難なお客さまと交渉する、という仕事だった。
これまでも督促の電話をして怒鳴られることはあったけれど、もちろん普通に会話をするお客さまもいた。
しかし、ここで私がお話をするのは100%なにかしら問題があるお客さまで、より濃縮されたクレームや入金困難なケースの対応をすることになる。
(なんだ、結局怒鳴られるのも、お金を返してくれないのも変わらないじゃないかー!! 何が花形部門だー!!)
結局どこまで行ってもコールセンター地獄からは逃れられない。