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年間回収額2000億円…“花形”の督促部署で遭遇したモンスター債務者たちのトンデモクレーム

『督促OL 修行日記』より #8

2021/01/24

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

note

「あいつをクビにしないと俺は絶対に入金しないぞ!」

 言われるがままに立たされていると、早速近くのオペレーターの手が上がった。

「上司を出せって言ってます!! 電話代わってください」

(上司って私のこと!? まだ入社して半年そこそこなのに!?)

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 そう言うとオペレーターさんは、私の手にヘッドセット(ヘッドフォンとマイクが一体となっているもの)を押しつけた。

 そうなのだ。電話をしているオペレーターはパートやアルバイトの非正規雇用の契約で働いている。なので、お客さまに「上司を出せ!」と言われたら、正社員である私たちが対応するのである。私が1年目の新入社員でも、オペレーターさんが勤続数年のベテランでも、ここでは私が「上司です!」と名乗って電話に出なければならない。

「お、お電話代わりました、じょ、上司のN本と申します……」

「何なんだ、さっきのオペレーターの態度は!! あいつをクビにしないと俺は絶対に入金しないぞ!」

「え、ええっー!?」

©iStock.com

入金困難なお客さまとの交渉

 私が新しい部署ですることになったのは、オペレーターが対応できないクレームや入金困難なお客さまと交渉する、という仕事だった。

 これまでも督促の電話をして怒鳴られることはあったけれど、もちろん普通に会話をするお客さまもいた。

 しかし、ここで私がお話をするのは100%なにかしら問題があるお客さまで、より濃縮されたクレームや入金困難なケースの対応をすることになる。

(なんだ、結局怒鳴られるのも、お金を返してくれないのも変わらないじゃないかー!! 何が花形部門だー!!)

 結局どこまで行ってもコールセンター地獄からは逃れられない。

督促OL 修行日記 (文春文庫)

榎本まみ

文藝春秋

2015年3月10日 発売

年間回収額2000億円…“花形”の督促部署で遭遇したモンスター債務者たちのトンデモクレーム

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