「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。
現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
◇◇◇
突然退職した先輩
ある日、いつものようにコールセンターに出社すると、私の目の保養、かつ教育係のS木先輩の姿が見えなくなっていた。
「あれ、S木先輩お休みですか?」
「あ、あいつ辞めたよ」
「へっ!?」
なんと先輩、突然の退職……。
この頃コールセンターでは、激務に耐えかねて退職する社員が続出していた。中にはいきなり連絡もなく会社に来なくなってしまう人もいた。
(ちょっと!! 放置好きだと思ってはいたけど、最後まで放任主義すぎやしませんかS木先輩!?)
出来たてほやほやで右も左もわからず運営されていたコールセンターも、この頃には形も整い職場環境もかなり改善されたので、もう終電で帰らずともすむようになっていた。
13人いた同期は8人に……
しかし、人間不思議なもので、息つく暇もないくらい忙しい時は誰も会社を辞めないのに、ちょっと時間に余裕ができ始めると突然バタバタと辞めていく。
4月に入社した私の同期もその例外ではなく、気がつくと最初13人いた同期の中で残っているのは8人になっていた。
次の仕事を見つけてさっさと辞める子。仕事は決まっていないけれど「もう耐えられない!」と辞表を叩きつけて行く子。三人いた同期の女の子の一人は、突発性の難聴になって電話業務ができなくなり、仕事を辞めざるをえなくなった。
もう一人の、希望の星・A子ちゃんも、勤務を続けてはいたけれど次第に会社を休みがちになっていた。
私も毎晩家に帰ると転職サイトをめぐるのが日課だった。土日にはこっそりと転職セミナーにも通っていた。
私がずるずると督促の仕事を続けていたのは、思い切って転職する勇気もなかったことと、周りに先を越されて辞めるタイミングを失っていただけだった……。そんな折、思いがけないニュースが入ってきた。