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BTS法、ク・ハラ法、ソルリ法…韓国政治家の“下心が見え見え”「芸能人法」には大きな“副作用”がある

2021/01/17
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 韓国では、とりわけ人の名前がつく法案が多い。「ネーミング法」とも呼ばれるが、社会的に大きな話題となった事件の当事者の名前をつけることで、堅苦しくて理解しにくい法案について、国民から共感を得られやすい効果がある。

 例えば、「BTS法」「ク・ハラ法」「ソルリ法」などである。それぞれの正式名称は「兵役法一部改正案」「民法改正案」「情報通信網法改正案」だ。

ク・ハラの死を伝える韓国SBSテレビ(2019年11月25日)

 日本でも話題になったのが「BTS法」だ。国威発揚に貢献した大衆芸術家に対し、満30歳まで入隊延期を可能にしたのが骨子である。

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 昨年12月に国会を通過した後、同月22日に国防部によって公布され、6カ月後の今年6月から施行される。

 BTSの「Dynamite」がビルボードHOT100の1位になったことを契機に、昨年の秋の通常国会で本格的に提起された法案という意味から「BTS法」と名付けられた。

「ク・ハラ法」成立前に、実母が……

「ク・ハラ法」とは簡単に言えば、子供あるいは親に対する養育や扶養の義務に反したり、虐待などの行動を犯した場合には相続権を剥奪することを骨子とする。

 人気ガールズグループ「KARA」出身のク・ハラさんは9歳の時に実母が家出した後、2歳年上の兄とともに祖母の手によって育てられた。実母の突然の家出の直後、父親は服毒自殺を試みるなど、実母の家出は幼いハラさんの心に深い傷を残した。ハラさんは2008年にKARAのメンバーに抜擢されて芸能界にデビューし、高い人気を博したが、不幸な家族関係によるうつ病に悩んでいたという。

 2019年11月、ハラさんは突然の自殺で多くのファンに衝撃を与えた。ところが、ハラさんの葬儀に20年間も連絡を絶っていた実母のAさんが、突然弁護士とともに現れ、ハラさんの遺産相続を主張したのだ。

 ハラさんの兄は2020年3月、国会に「扶養義務を捨てた親の相続権を剥奪してください」という立法請願を提出し、多くの国民が同意し、20代国会で関連民法改正案が発議された。しかし、会期間近の国会では期限切れで同法案は廃止され、昨年12月にAさんは法廷攻防を通じ、ハラさんの遺産の40%を相続できるという判決を勝ち取ることに成功した。

故ク・ハラの兄のインタビューを報じる現地メディア(韓国「スターニュース」2020年3月18日付)

 次の国会でも関連法案が多数発議されている中、今年1月7日、法務部も、「ク・ハラ法」の政府立法案を立法予告した。

 この法案は、40日間の意見収斂期間を経て国会に改正案が提出されれば、国会の議決過程を経て立法が完了する。