ネットの悪質な書き込みを取り締まる「ソルリ法」
ハラさんの親友で、ハラさんより1カ月先にこの世を去ったガールズグループ「f(x)」出身のソルリさんの名前を取った「ソルリ法」は現在、国会で議論中だ。
韓国社会ではソルリさんの死後、彼女がネット上の悪質な書き込みのため、深刻なうつ病を患い、自殺で命を絶ったという報道が殺到した。ソルリさんの死を契機にネット上の悪質なコメントが社会問題化すると、ネイバーやダウムなどの韓国ニュースサイトは、芸能記事のコメント欄を廃止した。
国会でも悪質なコメントに対する強力な処罰を骨子とした、いわゆる「ソルリ法」「チェ・ジンリ法」(ソルリさんの本名)などが多数発議された。ネットの匿名性の裏に隠れないようにネット実名制を導入することや、悪質な書き込みに対する処罰を強化することなどを骨子とする大同小異の法案だ。
慌てて作られる法律による“副作用”も
ただ最近、このような法案に芸能人の名前を使うことが、その本人たちにかえって被害を与えるという指摘が出始めている。
特に不幸な事件の被害者には、ネーミング法案自体が「2次加害」になるという意見も少なくない。
例えば、「ク・ハラ法」がマスコミによって取り上げられるたびに、彼女の自殺や彼女の家族史が引き続き話題になることは、ファンとしては決して喜ばしくない。
また、ネーミング法案は、世間の注目を集めた事件が起きると、短時間で作成される場合が多く、内容が不十分で、その“副作用”も伴わざるを得ないという指摘もある。綿密な検討無しに拙速で作られた法案は、かえって法案に名前が入った芸能人に対する反感につながりかねないというわけだ。
例えば、「ク・ハラ法」は、相続権を「血縁関係による天賦の権利」と認めている韓国憲法の精神に反するとの指摘がある。2018年には憲法裁判所でク・ハラさんの事件と似たような事案について、「扶養の有無によって相続権を決定できない」という判決が出ている。相続権の剥奪に値する「虐待等の行動」についても、詳細な範囲設定がないため、早くも相続訴訟が続出するのではないかとの予測も出ている。
「ソルリ法」も2012年、人気女優の崔真実(チェ・ジンシル)さんの自殺を機に、国会で発議された「崔真実法」(インターネット実名制法)が違憲判決で廃棄されたことを取り上げ、二番煎じになるという非難が出ている。「サイバー上の名誉毀損罪」など、ネット上での悪質な書き込みに対する処罰を規定した法案がすでにあるが、似たような法案を再び作れば、二重処罰になるという不満も出ている。