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大阪城北詰で40年続く“看板のない中華料理屋” 思いの詰まった「450円のラーメン」が味わい深かった!

B中華を探す旅――大阪城北詰「桃園」

2021/01/22
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まずはビールと餃子を注文!

 とりあえず、まずはビールと餃子を注文。スーパードライの350ml缶が出てきたことに驚きつつも、訪れた理由を告げてみることにした。

「お母さん、僕、このお店が気になってて東京から来たんですよ」
「新幹線に乗って?」
「そうそう」
「仕事でしょ?」

 いきなり仕事だとバレたが、ともあれそこから、お母さんの軽快なトークがスタートする。90歳という年齢にしては元気に見えるが、少し前に転んで背中を打ち、あまり調子はよくないらしい。

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「起きてね、掛け布団に引っかかって思い切りこけてね、背中を打ってるからね。ちょっと無理なの。9月から病院に2週間ほどおったんやけど、『湿布するだけやから、はよう帰り』いわれて帰ってきたの。だけど、なかなか治れへん。3、4カ月かかる。まあ、歳には勝てん。もう20歳ごろからずっとやってるけどね。昔は働き者でやってたけどね。もう、ええわ」

 亡くなった先代が始めた店で、厨房にいらっしゃった現在の店主は2代目だという。

「そやから、私ら、ここへ来て70年近いから。中華をここで始めてから40年ぐらい経つわな。昔、このあたりは大きな会社とか事務所とかばっかりあったの。そやから昼は、(入りきれない客が)表でみんな待ってくれとった。伝票渡してな、『食べるもん書いといてー』いうて。だから、うちは一番古いの」

 しかし、いまやマンションばかり。現在の客層は周辺で働く人たちが中心のようだが、新しいマンションの住人はあまり来てくれないそうだ。

追加でエビ玉も!

「ごめんなさい。少し焼けすぎたの。いい写真撮れる?」

 そんな話を聞いていたら、餃子を奥様が運んできてくださった。写真映えまで気にしてくださるとは、ありがたい限り。たしかに少し焦げてはいるが、皮に厚みがあって、とてもおいしい。細かく刻まれた白菜の味わいがポイントだ。

 

 あっという間にビールがなくなってしまったので、もう1本追加。そしてエビ玉もお願いした。すると、すぐに350ml缶を出してきてくれた奥様から、「これで終わりですよ」との声が。お母さんによると、いまは飲む人が少ないのだとか。

「うちはほんまに飲む人いないもの。昔はね、1升瓶の紹興酒とかね、晩になると(空き瓶が)いっぱいになってた。いま、そんなに飲む人はおらん」

 

 時代は変わったということか。だいいち、お母さんの同世代はもう近辺にいないらしい。