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 このエピソードは今回の記事では書けなかったが、その着眼は東京大学工学部航空宇宙工学科の卒業設計で取り組んだ、「冥王星探査機を巨大ソーラーパネルの帆で実現」という課題が原点だと明かしてくれた。

「いい折り方が思いつかず困り果てていたんですが、大晦日にこたつで紅白歌合戦を見ながら折り紙を何気なく折っていたら、折れてしまったんです。宇宙科学研究所に就職後、イカロスにそれが活かせるはずと確認して必死に提案していたんです」

2010年1月14日、津田雄一さんが「イカロス」の「帆」の折り方を披露してくれた。(著者撮影)
津田さんオリジナルの「折り方」が見事なので私(山根)は「ツダ巻」と命名した。(著者撮影)

化学工学者だった父からの教え

 今回の取材で津田さんは、プラントなどの材料腐食の研究を行っていた化学工学者の父から学んだことも話してくれた。

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「私が電子ピアノを作りたいと言ったら、電子回路図面を書き秋葉原でICチップを買ってきてくれるような父でした。小、中学生時代だったと思いますが、解決不能と言われていた数学の難問の証明が達成できたというニュースがありました。『こんなの役に立つとは思えない』と笑いながらぼそっと口にしたら、父に非常に厳しく叱られました。『こういう基礎科学に一生懸命取り組んでいる人がいることへの理解なしに安易なことを言うな!』と」

 斬新な着眼や発想、真摯な取り組みはその場の思いつきでいきなり出るものではない。

 若い時代に苦労を続け真摯に取り組んで成功した経験、役立たないと思われることでも懸命に取り組むことの大事さを学んできたことが、「はやぶさ2」の成功につながったのだなと思う。

「はやぶさ2」は、技術や科学の世界にとどまらず、文科系やビジネスの世界にも通じる貴重な教訓を多くもたらしてくれたプロジェクトなのである。

2019年4月5日、「はやぶさ2」は衝突装置で小惑星「リュウグウ」に人工クレーター生成に成功。世界のどの宇宙機関も行ったことない成果に報道陣が詰めかけた。(著者撮影)

出典:「文藝春秋」2月号

 津田プロジェクトマネージャのロング・インタビュー「はやぶさ2『管制室で震えた“完璧なる帰還”』」は、現在発売中の「文藝春秋」2月号及び「文藝春秋 電子版」に掲載されている。はやぶさ2と「カーリング競技」の共通点、リケジョの大活躍、津田家の秘話など……他誌では読めない内容が盛りだくさんだ。

文藝春秋

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はやぶさ2「管制室で震えた“完璧なる帰還”」