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6600万年前の巨大隕石衝突…地面を掘って“恐竜絶滅のナゾ”を解明した科学者の情熱

2021/01/17

 恐竜は宇宙からやってきた巨大隕石によって絶滅した――。

 この話を聞いたことがある人は多いだろう。隕石の衝突で巨大津波が起きたとか、環境の激しい変化で生物の大半が死滅したとか、隕石が落ちた場所はメキシコのあたりだとか……。

 これらは全て本当のことである。だが、なぜそう断定することができるのか、不思議に思ったことはないだろうか。人類が生まれるよりもはるか昔、6600万年前という途方も無い過去に起きた出来事の存在を、なぜ今、私たちは正確に知ることができるのか。それは、ひたすら地面を掘って“地球の謎”に迫ろうとする、科学者たちの知られざる挑戦の成果なのである。

©iStock.com

今も海底に残る“直径185kmのクレーター”

 巨大隕石の衝突によって地球に何が起きたのか、これまで様々な調査・研究が重ねられてきたが、決定的な証拠は2016年、つまり5年前に見つかっている。場所はメキシコ湾の海底、その地下617mである。

 その場所には、巨大隕石の衝突によって形成されたクレーターがある。と言っても6600万年前にできたものなので、はっきりとした地形は残っていない。そのうえ、土砂で完全に埋まっているので、仮にその場所に立ったとしても、かつての光景を想像することはできないだろう。専用の機器で計測した際に、わずかな磁気や重力などの異常が広範囲に、リング状になって認められることで、そこが直径185kmにもなる巨大クレーターであることが分かるのだ。

 そして様々なデータから、このクレーターの中心近くには、地下の岩石が盛り上がった場所があると判明していた。そこに隕石衝突時の状況を教えてくれる“何か”が眠っているのではないか――。そう考えた科学者たちは、その場所を狙って、海底に井戸を掘ってみることにした。

地下深くから持ち上げられた岩石 ©D.Smith/ECORD/IODP

 そして分かったのは、隕石衝突時の想像以上の衝撃度だった。海底から1335mの深さまで掘ってみたところ、617mより深い部分では、隕石衝突によってバラバラになった岩石の塊や、真っ黒いガラスのようなものが次々に見つかった。前者の表面には衝撃による割れ目のあとが生々しく残っており、顕微鏡でみないと分からないような小さな鉱物でさえ、激しく変形していた。また、ガラスのように見えたものは、衝撃によって溶けてしまい、その後に冷え固まった岩石だった。