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「ジーランディアの謎」についてまとめた前回の記事でも触れたが、海底では土砂が溜まりやすく、その中には土砂が溜まったときの地球環境に関する情報が“記録”されている。気温が高かったのなら、暖かい場所で生きた生物の痕跡などが土砂の中に残されるし、火山活動が活発だったのなら、火山灰が土砂の中に混じっている可能性が高い。

 土砂はそうして各時代、各瞬間の記録を残しながら、何層にも渡って積み重なる。この土砂を詳しく分析することで、隕石衝突直後に、地球で何が起きていたのかが分かるのである。

1~2cmにバラバラになった岩石と溶けて黒いガラスになった岩石 ©ECORD/IODP

隕石衝突後の地球を再現してみる

 分析の結果を紹介しよう。まず地下617mより浅い部分、つまりかつてのクレーターのすぐ上には、溶けた岩石が水で急に冷やされて固まったものが、40mの厚さにわたって積み重なっていた。ここから分かるのは、隕石の衝突直後、クレーターはすぐに周りから押し寄せてきた海水で満たされ、580度以上という高温から急激に冷やされたらしい、ということだ。これはクレーターができてから、数十分間の出来事である。

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 さらにその上に重なっていたのは、丸みをおびた岩石の塊が集まった90mの厚さの層だった。これは、激しい海水の流れで岩石の角が取れたことを意味する。つまり、クレーターが海水で満たされた後、その中で何度も津波があったということだ。クレーターは高い壁に囲まれた凹み地形なので、クレーター内で起きた津波が、クレーターの壁で複雑に反射する、といった事態も十分に起こりうるだろう。これは衝突直後~数時間ほどのうちに起きた出来事のようだ。

顕微鏡を使うと見える、0.1mmサイズで変形した鉱物  ©ECORD/IODP

 さらにその上の土砂からは、木炭の微粒子が大量に見つかった。隕石の衝突によって、(遠く離れた場所にあったであろう)陸地で大規模な山火事が起きたということだ。この山火事の痕跡は、津波によってクレーターまで運ばれたと考えられている。

 隕石衝突の衝撃が引き起こした巨大津波は、少なくとも数千kmのかなたにまで達したことが分かっている。この津波が、燃えていた森林まで達した後で、水が引いてゆくときに木炭を大量に海に引きずり込んだ。そして、その破片の一部がクレーターの場所まで運ばれ、溜まったようだ。