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みのもんたは“老害”だったのか? 水道橋博士が語る「テレビの王様」の異常な姿

『藝人春秋2 ハカセより愛をこめて』より #1

2021/02/09

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 芸能, 読書

「これだけのメンバーでやるのか。もはや中途半端な立ち位置でやっても仕方がない。正直、政治に巻き込まれるのは懲り懲りだ。しかし、中途半端にこなすのも、また後悔するだけだ……」

 そんな心理で討論会直前、息を整え、キッチリと中谷議員に噛み付いた。

「なにが自由民主党だ! どこに自由がある? どこに民主主義がある? これだけ民意の反発を受けながらの強行採決をするのは国民をなめきってますよ。今日は民主主義が終わった日だ、無神経すぎますよ!」

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 腹をくくって、話し、怒り、盛り上げ、出番を務めた。

 番組放送後、ああだこうだの反響、ネットの書き込みも増えるだろうが、もう後戻りはできない。討論中、何度も中谷議員と目が合った。秘密保護法推進側はただひとりの出演、周囲から袋叩きになるのだから、少しは申し訳ない気持ちにもなるが仕方ない(後に、中谷議員からは直筆の手紙を貰った)。

 東京都知事の猪瀬直樹のニュースでは「猪瀬さんも長年ジャーナリストをやって、権力を監視していた人なのに、紙袋に5000万円入れて金庫に隠している、その姿を自ら情けないと思わないのですかね!」と強めに切り捨てた。

 そして、本番中に南アフリカのネルソン・マンデラ死去の報──。

 個人的にもいろいろと感想が去来する。しかし、生放送で、この世界史上に残る偉人の業績を自分の頭の中で整え、語る時間も余裕もない。

 番組終了時、ヘトヘトになっていた。

「みのもんたは、これを毎日やっていたのか。しかも、8年間も……」

 想像しただけで気が遠くなった。

「テレビの王様」とのバトル

 その後、みのもんたに会う機会が訪れた。

 2016年9月16日──。

 MXテレビ『5時に夢中!』に、みのもんたと一緒にゲスト出演することになった。

©iStock.com

 本番前の打ち合わせの段階から、みのもんたは平気で楽屋に洋酒を持ち込み、きこしめす。

 その会議中、みのもんたの携帯電話の着信音が鳴り響いた。当然、マナー違反を恥じつつ「切る」のかと思ったら……。

「ママぁ~! お久しぶり~!」

「取るんかい?」

 横に座っていたボクは思わずツッコんだ。

 みのもんたは周囲を見回して、

「今? 全然大丈夫よぉ~。テレビの会議中なんだけどぉ、それも大したヤツじゃないからさぁ!! ウッシシシシシシ!!」

 と笑い飛ばした。

 さらにスタッフの話を聞きながら、随時、股間あたりを触り、シコシコと手を上下させる。

「スイマセン、みのさん、何をやっているんですか?」

「いや、手が冷えるんだよね~」

 それが本番前のルーティンらしい。

 不本意であるだろう休みを経て、さらに進化を遂げた、みの節が全開だった。

 17時から1時間の生放送。番組MCのふかわりょうとミッツ・マングローブが呆れるほど、ボクは終始、みのイジりに徹した。

 おそらく最後の共演になるだろうと思いながらの「テレビの王様」とのバトルだった。

 のらりくらり戦法で応戦するみのもんたも、もう72歳。顔には深いシワが刻まれ、番組終盤になるとさすがにお疲れの様子が見えた。

 それが画面越しにも伝わったのか、番組のエンディングで「今日のみのさんは、心なしか色白に見える」という視聴者からのメッセージが読まれた。

「ちょっと死相が出て来ましたね」

 ボクがそう言うと同時に、みのもんたのあの顔が大写しになった。

 その画にかぶせるように、みのもんたは「ガハハハハハ」と大笑いすると一言で締めた。

「そりゃあイイね!」

みのもんたは“老害”だったのか? 水道橋博士が語る「テレビの王様」の異常な姿

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