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「高校の修学旅行、バスの中でえぐえぐ泣いていた」 新芥川賞作家が“小説を書いていこう”と決めた瞬間

『推し、燃ゆ』芥川賞受賞インタビュー

2021/01/22
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卒論テーマは最も尊敬する作家・中上健次

 いかにも今風な題材を書きこなす本人は現在、21歳8ヶ月。史上3番目の若さ(最年少は綿矢りささんの19歳11ケ月、次いで金原ひとみさんの20歳5ヶ月)での芥川賞受賞者となった。

 1月20日の選考会で選出され、直後の受賞記者会見に臨む姿は、堂々たるものだった。

 ほうぼうから飛ぶ質問にも、

「受賞作の主人公は、推しを推すことが自分の背骨だと言います。私にとってそれにあたるのは小説を書くこと。これがあるからやっていけるんだという感覚は前からずっとあったので、これからも変わらないと思います」

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「大学の国文学専攻で学んでいるところです。宗教学に古典と、いろんなことに興味がありますね。卒論は、最も尊敬する作家・中上健次について書きたい」

「受賞をありがたく受け止めつつ、これからも、ただひたすら自分の目指すものを書いていきたい」

芥川賞受賞会見で 提供:日本文学振興会

 一つひとつ、落ち着き払って丁寧に答えていった。

「ちゃんとできていましたかね……? その場でしゃべることが苦手なので、上手く伝わったか不安です。流さず、真摯に答えようと心がけてはいたのですが……。

 受賞と聞いてしばらくは放心していましたが、さっきようやく、ジワジワと込み上げてくるものを感じましたね。屋上から東京のきれいな風景を眺めて、隣にはこれまで本当にお世話になった担当編集者がいてくれたとき……。(※ 受賞発表の翌日、文藝春秋で写真撮影に臨んでいた)

 解放感や安心感や、いろんなものが押し寄せてきて、泣きそうになっちゃいました」