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徴用工訴訟も「解決策はいろいろある」

 元徴用工訴訟、元慰安婦訴訟について「外交的解決を」と語った文大統領に対して、茂木敏充外相は「ここ数年、韓国によって国際約束が破られ、2国間合意が実施されていない状況がある。こうした現状では、問題を解決したいという韓国側の姿勢の表明だけで評価することは難しい。韓国側から具体的提案を見て評価したい」と突っぱねている。

 文大統領は、現状をどのように打開するつもりなのか。前出の黒田氏が語る。

「文大統領は今回初めて、徴用工問題について『日本企業の差し押さえた資産の現金化が行われることがあってはいけない』と述べた。実は、この問題の解決策はいろいろあるんです。

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 たとえば、日本企業が韓国で保持している株式を差し押さえると言われていますから、その金額を韓国政府が原告側に立て替えれば、日本企業に被害はなくなる。この裁判では日本政府は直接の当事者ではないですが、現実的に日本の企業に被害がなければ、韓国側の解決策を日本側も認めるかもしれない。

 これまで、『司法判決には介入できない』という文政権と、『条約無視で国際法違反の判決には従えない』とする日本政府のガチンコだったわけですが、文大統領発言は『資産現金化はさせない』という線で落とし所を探るということです。お互い知恵を絞れば双方顔が立つ解決策は出てくると思いますよ」

ソウルの日本大使館前の慰安婦像 ©文藝春秋

本当に「原告の同意」など取れるのか?

 慰安婦訴訟についても、文大統領は「原告が同意できる解決策を探すため、韓日間の協議を重ねたい」と語ったが、具体策は述べなかった。

 その一方で元慰安婦の支援団体「正義連」の李娜栄(イ・ナヨン)理事長は、1月20日に早速、文大統領の発言について「失望させる」とし、「人権弁護士時代を弱者と共にしてきた大統領が、被害者が約30年間にわたり戦って得た判決の国際人権史的な意味を知らないはずはない」と主張している。

 このような状況で原告の同意など得られるのだろうか。黒田氏が続ける。