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2021/02/01

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

「仕方なく、しゃべってしまいました」

「するとある日、重機の貿易商の1人から、唐突な連絡があったのです。水谷会長が信頼し、取引していた人です。その人が、『大変なことになってしまいました。検察庁に呼ばれているんだけど、調べあげられています。仕方なく、しゃべってしまいました』と、そう言うではないですか。お盆の真っ最中でした。裏金について洗いざらい話してしまったと言うのですから、驚きました」

 この水谷建設の関係者に電話連絡してきた人物は、関西で重機の貿易会社「大阪トレーディング」を経営している佐川弘良だった。水谷建設とはさほど古い取引ではないが、ある時期から水谷功に近づき、親密になっていったという。それが02年から06年にかけてのことだ。折しも、小沢事務所への裏献金疑惑、さらに水谷建設の脱税容疑の時期と重なる。

 ダムやトンネル、道路といった土木工事には、ブルドーザーやパワーショベル、ダンプカーなどの重機を使った工事が欠かせない。かつての大手ゼネコンはそうした重機を所有してきたが、昨今ではほとんど下請けに任せている。下請けとして重機土木工事を担うのが、水谷建設などのサブコンだ。

©iStock.com

 もっとも下請けといっても、数1000万円から億単位の重機を所有するサブコンは、そう多くはない。国が発注するようなビッグプロジェクトに参加するのは、水谷建設のほかでいえば、丸磯建設、山崎建設、宮本組など数社に限られている。

 そんなサブコンの強みが重機を所有していることであり、古くなれば買い替える。中古重機は海外に売られるケースが多く、そうした売買を仲介するのが重機ブローカーと呼ばれる貿易商である。水谷建設は重機の売買を通じて裏金を捻出し、政界工作に使ってきた。東京地検がそこを突いてきたのである。

蒸し返された脱税事件

 大阪トレーディングは、一時期の水谷建設が取引していた貿易会社であり、佐川はその社長だった。そこへ07年末、国税当局の査察が入る。そのときは追徴金だけでことなきを得た。だが、09年夏になり、それを蒸し返され、いきなり東京地検特捜部に呼び出されたというのである。先の水谷建設関係者が言葉を補う。

「お盆の16日だったでしょうか。佐川本人が8月の初頭から2週間もずっと取調べられているというのです。大阪から上京し、東京のビジネスホテルに宿泊して地検に通っているという。会長さんと会ったいきさつから個別の取引の中身まで聞かれ、それをぜんぶ話したといいます。そこから特捜部は会長本人の取調べに入ったのです」

 つまるところ、裏金の原資についての捜査である。もともと水谷建設の資金操作に関しては、以前に摘発した脱税事件で捜査の蓄積があった。

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