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「どんな子でも引っかかる」女性を騙して7300万円を荒稼ぎした男たちの“悪質な手口”の実態

『半グレ ―反社会勢力の実像―』より #1

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■「今、頑張って幸せになろう」

「(学生時代の)今から稼いでいる男は、普通のサラリーマンが一生かけて2億稼ぐところを、10億は超えてくる人もいる。この先、2人が一緒にいてたら、旦那は何億と出してくれるでしょ。それを考えたら、○○ちゃんがバーで何万使っても怒る金額にならないんじゃないかな。今、頑張れるのなら、○○ちゃんが支えてもいいんじゃないかな。恋愛ではみんな、相手にどうしたら好きになってもらえるか考えるよね?それが人として成長になると思う」

 ケンカという“危機”をわざとつくり出し、別のメンバーがアドバイスを与えるふりをして、金を使うように仕向けていく連携プレー。紹介したのは一部で、マニュアルには様々な場面を想定したやり取りが記してあった。

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悩みの解決を手伝うフリをして進められる“お金の教育”

 こうして女性の心理を巧みに揺さぶりながら、距離を詰めていったあと、金の必要性を刷り込む“お金の教育”を始めていく。それは、悩みの解決を手伝うフリをしながら進められる。

 マニュアルによれば、女性の悩みは「人間関係」、「お金」、「夢(目標)」、「健康」の4つに分けられるという。

 例えば「人間関係」。異性の関係で悩んでいる女性には「相手に振り向いてもらうためには自分磨きが大事」と解決策を提示し、そのために、「お金を使おう」、「お金を稼ごう」とアドバイスをする。ほかの3つの項目についても同様に、解決の方向性を示したうえで、「そのためにはお金が必要」とつなげる。悩みの相談に乗り、こうした“解決策”を繰り返し提示することで、金に対する価値観を変えていくというのである。

歪んだ価値観

 そして、“お金の教育”とセットなのが、風俗への斡旋である。マニュアルには「風俗契約編」があり、「今は大学生で風俗やっている子も多い」「みんなやっている」とあり、まず、風俗という仕事に対する心理的ハードルを下げていた。

©iStock.com

 次に“メリット”を説いていく。「1日働くだけで、普通のバイトの1か月分になる。最近では、体の関係を抜きに、食事だけ行って水商売より稼ぐことも珍しくはない仕事になってきた」

「何十年もかけて奨学金を返すことはしんどいけど、(ナイトワークなら)学生のうちに半年働くだけで十分貯まるし、目標まで稼いだら、すぐやめる人はたくさんいる」

「若いうちにお金の感覚は身に着けておいたほうがいい」

 悩みの解決のために金が必要と“教育”された女性たちに、風俗で働けば高額の収入が得られ、将来の不安も解消されると説得していく。

 そして最後には、「今しかない」と強調する。

「年齢を重ねてから、働きたいと言っても、その頃には「レート』が落ちて単価が安くなる。どうせならレートの高い今のうちに」

「レート」や「単価」という言葉に、元メンバーAが「女性がモノにしか見えなかった」という感覚に至った理由や、メンバーたちの歪んだ価値観が表れていた。マニュアルには、風俗店の様々な業態が、得られる収入とともにまとめられ、女性たちを組織的に“負のスパイラル”に陥れていく、悪質な手口が伝わってきた。

半グレ ―反社会勢力の実像― (新潮新書)

NHKスペシャル取材班

新潮社

2020年12月17日 発売

「どんな子でも引っかかる」女性を騙して7300万円を荒稼ぎした男たちの“悪質な手口”の実態

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