二度目の「緊急事態宣言」が発布され、さらなる深刻なダメージを受けているのがエンタテインメント産業だ。とりわけ演劇や音楽ライブなどは一部でクラスターが発生したことがトラウマとなり、公演の中止や無観客での配信が相次ぐなど風前の灯火となっている。

 関係者は、新型コロナの流行さえ収束すれば元のように戻るという希望にすがっている状況だが、事態が長引くほどに追い詰められている。

 その代表例ともいえるのが「ライブハウス」だ。もともと中小の経営が多く、経営基盤も盤石ではなかったせいか、地域密着型の老舗ライブハウスの閉店が全国で相次いでいる。(取材・文=素鞠清志郎/清談社)

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ヴィジュアル系バンドの聖地が次々に...

 なかでも、ファンや関係者に衝撃を与えたのが、ヴィジュアル系バンドの聖地と呼ばれた高田馬場「AREA」閉店の知らせだ。

高田馬場「AREA」

 昨年末に「オーナービルの老朽化」という理由で、2021年いっぱいの営業で閉店されることが発表されると、元「バンギャ」たちからのため息のような哀悼がSNSを席巻。つづいて、ゴールデンボンバーがはじめてワンマンライブを行った「IKEBUKURO CYBER」も閉店を発表。こちらの閉店の理由は「諸般の事情」とされているが、日本の音楽シーンの中でも「ヴィジュアル系(以下、V系)」の周辺から倒れる所が出てきた、という印象を与えることとなった。

 新宿区高田馬場にあるライブハウス「AREA」は、1997年にオープン。スタンディングで400人収容できるという「中箱」で、V系バンドの聖地と呼ばれている。

 入り口横の急な坂道に、ゴスロリファッションに身を包んだバンギャたちが列を成している姿は、お馴染みの風景だった。

 V系バンド黎明期からシーンを追い続けている古参のファンで音楽関係者の飯田直子さん(仮名・50代)は、AREA閉店の報に驚きを隠せなかったという。

「ニュースを聞いたときは声が出ました。AREAは今でも頻繁にV系のライブが開催されてるし、お客さんも入っていて、景気は悪くなさそうでしたから」(飯田さん)

 テレビやメディアで取り上げられることは少ないが、現在でも多くのV系バンドが活動を続けており、多くのファンを集めている。もはやブームを超えたジャンルとして、しっかりと音楽シーンに根付いているのだ。