虎ノ門界隈にも押し寄せている再開発の波
神保町時代からの人気メニューを聞くと、「かき揚げそば」や「ナス天そば」などの天ぷらそば、あとはお父さんが手伝うときにだけある幻の自家製の「コロッケそば」だという。私も「峠そば」のコロッケには、一度も出会ったことがない。是非、今度、食べてみたいものである。坪内祐三さんを偲んで食べた「かき揚げそば」はまた格別であった。今にも坪内さんがぶらっと店に入ってきそうな気配さえ感じられた。
さて、帰り際、気になる話を若旦那から耳にした。「峠そば」のある虎ノ門界隈も、再開発の波が押し寄せている。「1年半か2年後には立ち退きになる可能性もある」というのだ。バブル後に神保町から立ち退き、そして虎ノ門に来てもまたそんな状況が立ちはだかっている。「具体的にまだ何も話が来てないのですが、もしわかれば早く良い場所に移転したい」と若旦那はいう。前向きで偉いと思った次第である。
坪内祐三さんの著作「新・旧銀座八丁 東と西」(講談社2018)では、銀座の老舗・小規模の良店が消えていき、良き銀座が失われつつあることを大いに嘆いている。
もし、坪内さんがご存命なら、コロナ禍で大衆そば屋の良店や老舗居酒屋が消え去り、また再開発で街ごと変化していく現状をどう書き記していただろうかと思うと、急逝は残念でならない。どうかコロナ禍を生き抜く勇気を、我々に与え続けてほしいと思う。
なお、神保町の東京堂書店では坪内祐三さんの一周忌を偲んで著作を含む『昭和雑文家番付』フェアを2月中旬まで開催中である。
INFORMATION
「峠そば」
住所:東京都港区虎ノ門1-8-11
営業時間:平日7:00~8:30 11:00~13:30(売り切れの場合早まることがあります)
定休日 土日祝
(営業時間はコロナの為変更する場合があります)