昨年末、「古田敦也氏を来春キャンプ臨時コーチに招へい」というニュースが多くのヤクルトファンを歓喜の渦に巻き込んだ。2021(令和3)年度キャンプでは阪神・川相昌弘氏、中日・立浪和義氏、ロッテ・松中信彦氏ら、大物OBによる「臨時コーチ就任」が話題となっているが、「古田臨時コーチ」のインパクトはとてつもなく大きかったのだ。

「古田敦也」といえばまさにスワローズの「正捕手」だった現役時代 ©文藝春秋

 他球団ファンからしたら、「単なるOBの一時的な古巣復帰だろう」と映るかもしれない。しかし、そんな単純なことではないのだ。選手兼任監督だった2007(平成19)年の退団以来、一度も現場に戻ることなく、いや、そのそぶりさえまったく感じさせることのなかった「歴代最高捕手」である古田氏が、「臨時コーチ」とはいえ、ついに14年ぶりにスワローズに戻ってくるのである。多くのファンが歓喜したのは当然のことだった。

「監督やれ!」ノムさんが古田に遺した言葉

 就任2年目を迎え、「今季こそは」の思いが強い高津臣吾監督にとって、これほど心強い存在はないだろう。昨年2月に野村克也さんが急逝された際に、生前の野村さんに関するさまざまな特番が組まれ、BS朝日『スポーツクロス』の「野村克也×古田敦也師弟対談」が再放送された。この対談のラストで、ノムさんはひときわ大きな声で古田さんに檄を飛ばしている。

ADVERTISEMENT

ヤクルト監督時代の野村克也 ©文藝春秋

「声を大にして言いたいのはね、監督やれ! 野球界でいい思いをしたんだから、今度は恩返しする番だ。もったいないよ、遊ばせておくのは。プロ野球の世界が今、監督の器がいないんだよ、僕の中では。こいつ監督になったら面白いな、こいついい監督になるだろうなって一人もいない。唯一、コレだけ……」

「コレ」と言いながら、古田さんを指差したのだ。さらにノムさんは続ける。