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ロックダウンも休校も行わず、いったいどのように防疫対策が奏功したのか

 台湾に住むある外国人はマスク購入システムの発展を目の当たりにし、「政策が常に進化している」と感慨を込めて語った。

©iStock.com

 感染状況が相対的に落ち着いていた台湾に、多くの国が興味を持った。都市封鎖(ロックダウン)も休校も行わず、いったいどのように防疫対策が奏功したのか、と。

 英語が母語同様に流暢なタンは、マスクマップの成功体験を伝えようと、2月以降、欧米とアジア各国の20を超えるメディアから、次々とインタビューを受けた。直近の米国CNNのインタビューでは、台湾政府の防疫対策を3つの柱(3つのF)に分類してみせた。すなわち水際検疫の早期実施(Fast)、防疫物資の公平な分配(Fair)、防疫についての人々とのユーモア溢れるコミュニケーション(Fun)だ。

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政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要がある

「Fun(ユーモアコミュニケーション)」には2つの方法がある。

 1つはフェイク情報に対するものだ。フェイク情報が世にあふれている今、タンは、政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要があると考えた。うわさを流す人は、多くの人の怒りをかき立てて情報を拡散しようとする。そうであれば、ユーモアをもって本当の情報を発信すれば、疑念からの不安を解消できるだけでなく、ネットユーザーも「怒り」の気持ちを「喜び」に変えることができる。

 タンは「1時間以内にユーモアを交えて本当の情報を発信し、反撃する」ことができれば、人々は笑いながら進んで真実をシェアしてくれるため、インターネット上で本当の情報がフェイク情報よりも速く伝わると語った。

「こうすれば、単に事実を明らかにするよりもずっと効果的だ」

 また、英国BBCのインタビューではもう1つの「ユーモアコミュニケーション」に触れ、それが政府の防疫政策の発信にも使われたことを話した。例えば今回、防疫宣伝の大役を担った衛生福利部インターネット編集担当者が、愛犬の写真を同部公式Facebookページにミーム(吹き出し文字を組み合わせた画像)として載せたところ、意外にも熱烈な反響を呼んだのだ。

写真はイメージです ©iStock.com

「その後、衛生福利部にはスポークスパーソンだけでなく、スポークスドッグもいることになりました」

 タンは笑いながら海外メディアに英語で答えた。この愛らしい柴犬は、Facebook上でマスクの正確な着け方を伝えたり、感染状況が緊迫したときには、家の中でテレビや映画をみることを勧め、状況が落ち着いたときには「防疫新生活(感染症対策のための新しい生活様式)」で郊外に遊びに行こうと力づけたりした。