新型コロナウイルスに対して水際対策やマスクの配給制で成果を挙げた台湾。IT担当相として実務を担ったのが、プログラマーのオードリー・タンだ。彼女の素顔や生い立ちを紐解いた『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(アイリス・チュウ/鄭仲嵐 著)から一部を紹介する。(全2回の2回目。前編を読む)
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About Episode 1 : 35歳のIT大臣
――今回の新型コロナウイルス感染症を、プラスの面からどのように読み解きますか。
世界中の人々が同じ舟に乗り合わせた仲間であり、考え出された解決策は、みなが進んで世界と共有しています。世界中の人々が共に呼吸し、同じウイルスで病気にもなります。国境や民族で区別はありません。
世界中が運命でつながっていることを、多くの人々がついに深く理解しました。
――デジタル政委の任期内で、どのようなことをご自身の努力で変えたいと思いますか。
私の仕事は自分が変化を起こすことではありません。誰かが何らかの変化を生み出した時、それがデジタルトランスフォーメーション(DX)であれ、持続可能な移行(サステナビリティートランジション)であれ、その変化が起きた時から拡散しやすくなるようにすることです。言い換えると、私はその考え方を増幅(エンパワー)し、拡大させるだけです。
すべての物事は変化し、変化するということだけが不変です。これは『易経』の考えですが、私は、社会の各界の人々が、私たちが現在経験している変化を理解できるよう手伝いたいと考えています。
――あなたは世間が認める天才ですが、世間の人は「天才にできないことはない」と考えます。あなたには困難と思えることがありますか。
問題に「打ち負かされる」ことと、「打ち負かされない」ことの違いは、急いで解決しなければならないという時間的プレッシャーの中でのみ生じます。
困難にぶつかった時は、その問題と付き合っていく必要があります。長期間付き合うことができれば、問題に打ち負かされることはありません。なぜなら、問題と共生する方法を探し出すことができるからです。