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番組プロデューサーが選ぶ「神回」

髙木 『相席食堂』の方向性が見えたのは、やっぱり菊池桃子さんと千原せいじさんに出てもらった最初の回です。その後に勝負をかけたのは、千鳥の地元に行った回。他にも、番組のステップを上げるために勝負に出た回はいくつかあって、例えば村上ショージさんの回では、事前に「このロケで千鳥を泣かすVTRを作ってくれ」とオーダーをかけていて。これはディレクターがすごいんですけど、本当に思った通りのものを描いてくれました。

 あとは、好きな回で言うと、がっちりハマったなというのはくまだまさしさんの回と、アンガールズ田中さんの回ですね。千鳥のツッコミ含めて起承転結が出来ていたので。

©ABCテレビ
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――田中さんの回は1本のVTRの中で感情があっちにいってこっちにいって、という面白さがありました。

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髙木 キモかわいい田中さんはいろんな番組で見ているんで、何か違う田中さんが欲しいなと思ってたんですよ。その答えが何なのかはわからなかったんですけど、これも奇跡的に、ロケに行ったらその町ではいきなり男前として扱われて。で、田中さんもどんどん良い人になっていって、さらには心がピュアな少年に出会って。その町では田中さんは顔も心も男前になっていくんですけど、やっぱり最後に化けの皮が剥がれる(笑)。そのすばらしさというか、起承転結の順番がしっかりしてたんだろうな、と。くまだまさしさんもそうでしたよね。

『相席食堂』独特の“変な間”の秘密

――『相席食堂』は、VTRの中にあえて変な間を残しているのも面白さの一つだと思うのですが、これはどういう経緯で生まれた手法だったんでしょうか。

髙木 回を重ねるうちに引き出しが増えていったというのはもちろんあるんですけど、もともと人間の感情を描くには間が必要だったんです。その延長線上で変な間になってるんかな、って思うんですけど。

――その人の素が出る瞬間、というような?

髙木 そうですね。それは絶対必要なんですよ。それこそ今のゴールデンの番組とかは、そんな間は要らない、それよりもとにかく新しい情報を入れよう、という作り方をしてるんだと思うんです。でも、僕らはそれがあるからこそ、千鳥もツッコめると考えていて。

 例えばVTRの最後の変な間は、僕らがそこを作為的に選ぶことによって、人柄が出る一方、タレントさんも「こっち(制作側)が悪いよね」と思えるじゃないですか。だから、色んなバランスがちょうどいいんだろうな、と。あの変な間が本当にその人を表している気がしますし、実際現場ってそんなことの繰り返しだったりするので。

――仕事モードから素に戻る数秒間、みたいな。

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髙木 なんか出ますよね、表情とか。でも、僕らも長使いしてくれとディレクターに言ってるわけじゃないので、やるのはいいけど、もしスタジオで跳ねなかったらバッサリいきますよ、という感じで(笑)。実際、オンエアではカットされているシーンが結構あるんです。スタジオで千鳥に見せるVTRは相当長いので。

――もともとのVTRは何分くらいあるんですか?

髙木 感覚でいうと、VTRの尺は放送尺と同じくらいです。そこにあれだけツッコんでいって、どんどん削られていく感じです。でも、不思議となんだかんだうまくいくんですよ。たまにスタジオが変な空気になることもあるんですけどね。その人がどういう人かを見せるために、最初に相席した人とのトークを長使いしたりするんですけど、そこで千鳥から「おもんない」とかっていう流れが立ち上がってしまうと、どうしよう、って(笑)。