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何があっても千鳥を信じて走らせる

――番組の中では、時にはロケを担当したディレクターが登場して千鳥にツッコまれたりもしていますが、その独特の関係性といいますか、仲の良さ、お互いの信頼感が画面越しにも伝わってきます。

髙木 あまりお互いには言わないんですけど、信頼はすごく大事にしていますね。僕らもVTRを作るときは、ここで千鳥がこうツッコんだらVTRがこう見えていって……というのは、もちろん計算してやっているんです。でも、そうならないこともあるんですよ。それはなぜかというと、収録前の打ち合わせで細かいことを言わずに、本当にその場でいきなりVTRを見てもらっているからです。

 例えばこういう系の番組であれば、スタジオの流れがちょっと違う方向になってきたら、ディレクターが一旦止めて、「もっとこういう風に持っていきたい」と説明して、最悪ちょっと前から撮り直すとか、普通はそういうこともあると思うんですよ。でも僕らは、収録の流れを巻き戻したことは一度もないんです。今のちょっと違う方向やな、嫌やな、と思っても、二人を信じてそのまま走らせる。それだけは、初回から絶対守ってることなんですよね。

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©ABCテレビ

――途中で止めてしまったら、ここまで築いてきた関係も崩れてしまうと。

髙木 一度でもそれをやってしまったら、二度と今の関係性は作れないので。もちろん、収録中に顔でアピールはしますよ(笑)。これやばいよ、って顔はしますけど、その空気を察してくれたあとにどうするのかは、千鳥に任せていて。そういう積み重ねが、お互いの信頼関係を生んでるのかな、と思います。たぶん特殊なやり方ですけどね。でも、タレントさんに本気になってもらうためにどうすればいいのか、というのは考えてます。

 千鳥の二人は「この番組はすごい疲れる」って言ってくれるんですけど、それはきっと本気でやってくれているからなんですよね。決してこの番組のシステムが疲れる、というだけではなくて。

制作の現場に行けたのは32歳を過ぎてから

――髙木さんが『相席食堂』に出会うまでのお話も伺いたいです。そもそも、就活のときは絶対テレビ局に行きたい、と思っていたんでしょうか。

髙木 全然思ってないです(笑)。テレビを見るのは好きだったんですけど、この業界に入る人って「テレビめちゃくちゃ好き!」って人が多いんですよ。面接の時も分厚い企画書を自分で持ってきてる人とかいて、あれ、この人たちほど熱ないな、と思ってたくらいで。

――では、就活のときはとりあえず受けてみようかな、くらいで?

©ABCテレビ

髙木 僕、理系なんですよ。大学院で化学を学んでいて、電池とか作ってたんです。で、研究室って、教授伝いで就職が決まっていくんです。研究員としてこの企業へ、と。でもある日、実験するときに着る白衣の胸に就職する企業のロゴをつけて、一日頑張ってみたら、なんか全然おもんなかったんです(笑)。人生これでええんかな、と……。それで急遽就活することにして。テレビを受けたのは選考の時期が早かったからなんですが、受かったときは「あ、行きたい!」ってなったんで、ここでいいかなと。

――入社時は制作志望で?

髙木 そうですね。僕、『あいのり』が好きやったんです。『あいのり』ってめっちゃすごい番組だと思っていて、恋愛という要素を使いながら、その国の歴史とか環境問題とか、本来は堅苦しい話を、興味がない人にも自然に見せている。そんなことを面接で言っていたら受かりましたね。でも入ったら、配属先はラジオでした。しかも営業と言われて。本当に騙された気持ちで、いつやめてやろうかと思ってました(笑)。

髙木伸也プロデューサー

――最初からバラエティの制作だったわけではないんですね。

髙木 ラジオで2年半経ったら「じゃあテレビや!」って言われて、「よっしゃ!」って思ったら、また営業でした。そこでもう終わったな、と。ようやく現場に行けたのは、32歳を過ぎてからです。ずっと制作に行きたいと言っていたので「ありがとうございます」とは言ったものの、内心「おっそいわ」と思ってました。32から行く部署じゃないでしょ、と。