――32歳で現場にいくと、立場的にはどうなるんですか?
髙木 全然ADです。ボロ雑巾のように働いてましたね。大卒で制作に行っていたら、年齢的にはもう10年目になる年なので、まずはこの空白の10年をどう埋めようかとずっと思っていました。
いま注目している他局のバラエティ番組は?
――『相席食堂』にたどり着いたのは、制作に来てから何年目のことだったんでしょうか。
髙木 4年目ですね。時間的にはすぐ過ぎた感じだったんですけど、体も心もボロボロになっていたので……今となっては、当時の経験があってよかったなと思いますけど、決して後輩には真似させたくないというか、不思議な感覚ですね。
――ちなみに今、他局のバラエティの中で注目している番組はありますか?
髙木 月並みですけど、やっぱり『イッテQ』は面白いと思います。『イッテQ』は小さいことをめちゃくちゃ発明していってますね。視聴者も気づかない程度のものなんですけど、例えばVTRの始まり方も、「どーも、◯◯です! 今回はこういうことしたいと思います!」ってやってないんですよ。それをネタでやることはあるんですけど、いきなり直線的に本題に入ったりしてるんです。
あとは『水曜日のダウンタウン』とか。やっぱり説を見ただけで「ちょっと見たいな」って思うので。この“ちょっと”が絶対にある説を週に3個見つけるって凄いな、モンスターだな、と。同じ土俵で戦ったら絶対に負けますね。
それと今回、『相席食堂』をゴールデンでやろうとなったのも、「ゴールデンと言えば情報を織り交ぜて、テンポを上げて」というやり方じゃないと生き残れなかった状況をこじ開けてくれた、『有吉の壁』のような番組があったからだと思います。ずっと視聴率、視聴率と言われて、似たようなバラエティが増えてきた中で、ちょっとずつ番組の多様性が生まれ始めている、時代がそういうステージに入ってきたのかな、という気はします。とくに若い人たちの間では。
「視聴率」ではなく「視聴者」に向けて番組を作る
――『相席食堂』も、視聴者は若い人が多いんでしょうか。
髙木 ちょっとずつ変わってきてはいるんですけど、同じ時間帯に放送している番組でいうと、極端に50歳以下の割合が高いですね。意外に20代女子に人気だったりします。作る側からすると、50歳以上の方が見てもめちゃめちゃ面白い、と思って作ってますけど。
――若い世代では全くテレビを見ない人も増えていますが、そうした「テレビ離れ」をこれからのバラエティ番組はどう乗り越えていけばいいのか、そのあたりはどう考えていらっしゃいますか。
髙木 視聴率ではなくて、本当の意味で「視聴者」を意識した番組を作れば問題ないかな、と思っています。テレビってずっと、絶対に視聴者がお茶の間にいるという前提で何十年もやってきて、その中でいろんな発明をしてきましたよね。定時よりちょっと早めにスタートしたりだとか、CMは後ろにためたほうが良いとか、テロップで煽ろうとか、全部の作り方が視聴者に向けてじゃなくて、視聴率に向けて作ってた気がするんです。
だから僕らは、そういうのはもうやめよう、という話をずっとしていて。若者ってテレビ見てないよね、じゃあどうやったら見てもらえるのかな、というところから考えるようにしています。『相席食堂』でいうと、この番組って何ですかと問われたときに、「嫌なことが多い世の中で、『そんなこと忘れちゃうわ』と腹を抱えて笑える瞬間が絶対にある番組」だとスタッフには言ってるんです。それが実践できれば、この番組は面白いと話題になるし、視聴率はあとからついてくるから心配しないで、と。
いまテレビ業界は急速に変革を求められているので、売り上げに直結する視聴率を追いかけたりだとか、配信などの別の収入を模索したりだとか、ついつい色々な考えが前に出てしまっている気がするんです。でももう一度原点に戻って、「世の中のためになることをやっている」と自分たちが信じ続けられるかどうかが、本当に大事ですよね。自分たちの信念として、そういう気持ちで番組を作れれば、まだまだテレビは大丈夫――それに気づかせてくれたのが、『相席食堂』という番組です。
INFORMATION
「相席食堂」一夜限りのゴールデンSP
2月2日(火)午後6時45分~(※一部地域を除く)
※関東地区及び岩手県、広島県、熊本県では午後6時45分から、それ以外の地域では午後7時からの放送
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。