州議会の先を越して島購入、ハワイが大激怒
セントラルアパートを手放した後の87年4月、オアフ島の北東部に浮かぶ約10万㎡の「ココナツ島」を購入。
美しいサンゴ礁に囲まれたこの島は、カメハメハ王朝最後の王妃が所有していたが、米国の富豪に渡り、海洋生物学の研究拠点として観光から隔離されていた。富豪の死亡後、ハワイ州議会は環境維持のために800万ドルでこの島の購入を議決したが、翌日、川口社長が850万ドル(当時約12億円)で購入したのだ。
川口社長は「州議会で議題になっていたことは知らなかった」「買い戻しには応じない」とコメントした。購入目的は「社員研修所用」だったという(朝日新聞87年5月11日夕刊)。
“地上げ屋”が社員研修所用にハワイの島を買う発想は、当時珍しくなかった。その後、日本人のハワイ不動産購入が増え、地元では“買い漁り”として反発が強まっていく。
翌88年5月、川口社長はハワイのホノルル空港に到着した時、ビザの虚偽申請容疑で逮捕され、入国できずに帰国。ハワイ州による“見せしめ”とも言われた。
「ヘリで1時間40分かけて京都に昼めし食いに行くことも」
ココナツ島を購入した後、川口社長は「週刊ポスト」に登場した(87年6月26日号「ニッポン金満紳士録」)。
この時まだ45歳だった。
腎臓病により人工透析を受けていたが、「うまいもの食うことに手間ヒマ惜しまない方だよ。ヘリで1時間40分かけて京都に昼めし食いに行くこともあるんだ」。
経歴は、「姫路出身、関学大卒、富士製鉄(現・日本製鉄)入社…」と説明したが、週刊ポストは「関学も富士製鉄も調べてみると、在籍してないという人もいますが…」とやんわり否定。
75年に、ゴルフ場造成に絡む預金証明書の偽造・行使で逮捕されていたが、「当時のゴルフ場業者は、ほとんど皆それをやっていた」と反論。81年には、貴金属会社社長として3億円の手形詐欺容疑で逮捕されていたが、「単に融通手形をやり取りして自分の会社が倒産、相手に告訴されただけ」と主張した。
セントラルアパートを購入した時の融資300億円については、「今どき(金利が)15%なんて信じられない。ふつう我々が金融機関から借りる時は6%ですよ」と言い、「(セゾングループが)貸し借りの道からはずれて “俺んとこで欲しい”って難題を吹っかけて来た」と言っている(実際は記事登場前に代物弁済されている)。