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銃弾が顔を貫通、左眼が破裂…あの“有名ビル”を買った社長に起きた悲劇

2021/02/05
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 そして自分の資産は「事業資産は3000億円かな。個人では株が担保能力で300~500億円…」と豪語した。 

社長宅に押入り…人質事件で顔が銃弾が貫通、左眼が破裂

 その直後に悲劇は起きた。 

 87年9月の昼間、暴力団の男(40歳)が短銃を持って東京・杉並区の川口社長宅に押し入り、お手伝いの女性(58歳)を人質にして籠城する事件を起こす。 

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 男は2階寝室に籠り、部屋にあった高級ウイスキーを飲みながら、警視庁に対して電話口で川口社長に対する恨みを吐き出し、逃走用の車を要求した。 

©iStock.com

 6時間が過ぎた午後5時過ぎ、警視庁はライトバンを準備し、運転手役の捜査員が自宅に入った。男が出て来た時の隙を突いて拘束するはずだった。男は女性と捜査員に手錠をかけ、女性の頭に銃を突き付けて姿を現し、玄関脇に潜んでいた3人の捜査員に気付いていきなり発砲。捜査員の1人に命中し、続けて女性を撃ち、最後に自分の顔に向けて発砲した。 

 女性は病院に運ばれたが死亡、捜査員は顔面と背部の銃弾貫通で重傷。男はアゴから鼻にかけて銃弾が貫通し、左眼が破裂したが一命は取りとめた(読売新聞87年9月29日他)。 

 男は暴力団組内でトラブルを起こし、出身地の北海道網走市に戻った後、週刊ポストの記事を見て「川口社長から1億円を奪おうと考えた」と供述した。4カ月後、男は拘置所で自殺した。 

コロナ禍だが…若者で賑わう東急プラザ

 セントラルアパートはその後取り壊され、2012年3月、地上7階・地下2階の東急プラザが建てられた。現在は、ファッションなど30を超えるテナントが入っている。 

若者で賑わう原宿の東急プラザ=2021年1月30日、東京都渋谷区(筆者提供)

 川口社長が300億円で購入し、600億円まで跳ね上がった後、バブル崩壊と共に地価は暴落した。しかし近年の都心の地価上昇により、ここも地価が上がっている。昨年1月時点の路線価を見ると、再び600億円程度の値が付く勢いだ。 

 しかしコロナの影響はここにも及び、案内板を見ると、3店が閉店を告げる貼り紙を掲げていた。

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