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俺たちの森喜朗、期待に応えて自ら東京オリンピックを台無しにする

日本における「会議」という名前の儀式の問題

2021/02/04
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批判を上手く集め、国家級の問題を覆い隠す風情

 そして、これらの森喜朗さんのベクトルは、おそらく「さっさと東京オリンピックをやる方向で議論を調整して理事会を進めておいてくれ」であります。分かりやすい。小学生のひらがな練習帳レベルの理解のしやすさです。そこには事態への深慮とか合理性よりも人間関係やメンツを重んじる日本政治のすべてが凝縮されているようにも感じます。

 このような森喜朗さんの素敵で正直で素朴な発言が無事問題視された結果、森喜朗さんの辞任問題が持ち上がり、それ以外の政治的な問題が覆い隠され、一時期はコロナ一色であった世間の話題が国民の爆笑をもって「また森喜朗がやりやがった」というパブリックエネミー扱いとして袋叩きになる祭事となります。殺到する菅義偉政権への批判をそらし、国民からは不必要の烙印を押されつつある東京オリンピックを中止・再延期の方向へ向かわせる神の国スイッチを発動させる男、森喜朗さんの面目躍如であります。

©️AFLO

 やっぱこう、国民から不人気な人たちが批判を上手く集め、そっちに国民やメディアの槍の穂先が向かっているうちに、ひっそりと国家級の問題が覆い隠される風情でもありまして、世の中というのはうまくできているんだなあと感じますね。

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東京オリンピックのレガシーとして

 しまいには、先般の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という失言への釈明として森喜朗さんがおっしゃったのは「一般論として、女性の数だけを増やすのは考えものだということが言いたかった」。いや、これは凄いことですよ。恥の上塗りというよりは、恥の厚焼き、あんこ入りであります。なんで会議に女性の数が増えたら考えものなんだよ。さっぱり理解できないのですが、でもこれも本音だと思うんですよね。

©️iStock.com

 一国民として「ほかにまともな大物はいねえのか」という気持ちも抱きしめたうえで、東京オリンピックのレガシーとして森喜朗さんの記憶は長く留めておきたく存じます。

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