「大阪は痰壺」「イット革命」など、数々の迷言で知られる森喜朗元首相。

 政界引退後も、スポーツにかんして「あの子(浅田真央)、大事なときには必ず転ぶ」「国がたった2500億円も出せなかったのかね」「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。ある意味、五輪関係者にとってはチャンス」など次々に新作を放ち、相変わらず意気軒昂である。

ちらつく神社本庁や日本会議の影

 そんなかれの代表的迷言は、いうまでもなく「神の国」発言だ。これは、首相時代の2000(平成12)年5月、ホテルニューオータニで開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会」結成30周年記念祝賀会の挨拶で、飛び出したものだった。

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 村上(正邦)幹事長その他多大なるご努力のもと、「昭和の日」などの制定をいたしましたり、今の天皇のご在位のお祝いをいたしましたり、[昭和天皇]陛下ご即位50年、60年のお祝いをいたしましたり、ま、ややもすると政府側、今、私は政府側におるわけでございますが、若干及び腰になることをしっかりと前面に出して、日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知していただく、その思いでですね、私たちが活動して30年になったわけでございます。

「日本は天皇中心の神の国である」という趣旨の自らの発言について、釈明記者会見をする森喜朗首相(東京・首相官邸) ©時事通信社

 神道政治連盟は神社本庁の関係団体で、村上正邦は日本会議の「生みの親」とされる人物。これら名前が頻りに取り沙汰される今日から振り返ると、なかなか味わい深い。

 それはともかく、「神の国」という言葉は、戦中に「日本よい国、きよい国、世界に一つの神の国」のごとく、天皇国家を賛美するために使われていた。そのため、この発言も「主権在民や政教分離に反する」「戦争の歴史を反省していない」などと批判された。