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特集私が令和に語り継ぎたい「平成の名言」

2019/04/28

「多少のおべんちゃらを言うのは当たり前でしょう」

 というのも、ほかならぬ森自身が、「神の国」発言を「おべんちゃら」だったと赤裸々に告白しているからだ。2007年刊行の『森喜朗 自民党と政権交代』(朝日新聞社)にいわく――。

 神道政治連盟の会合での発言だから、出席している神主さんたちに多少のおべんちゃらを言うのは当たり前でしょう。

 身も蓋もない御仁である。保守系の論者が、擁護せんと必死に頑張っていたのも虚しく感じられる。

森喜朗氏 ©文藝春秋

 森にとっては、「今の世の中、平気で親を殺し、子供を殺す事件が相次いでいるが、それは宗教教育がなされてないからだ」との主張のほうが重要だったという。念のため、該当する箇所も引いておこう。

 神様であれ、仏様であれ、天照大神であれ、神武天皇であれ、親鸞聖人であれ、日蓮さんであれ誰でもいい、宗教というのは自分の心に宿る文化なんですから、そのことをもっとみんな大事にしようよということを、もっとなんで教育現場でいわないのかな、信教の自由だから、触れてはならんのかな。

 とすれば、「天皇中心の神の国」発言はまさに不注意で、乱暴な表現だった。その意味で、前掲『日本は「神の国」ではないのですか』における、西部邁の指摘のみが鋭かった。

西部邁氏 ©文藝春秋

「常識的に考えれば、選挙の票を集めるために神道政治連盟の人々にとって聞こえのいい発言をしたに過ぎないということだろう」(「国民主権をはきちがえた『民の国』の人々へ」)。