「資産としてのブランド」という考え方
そもそもブランドとは何か? 1980年代後半まで、多くの企業はこう考えていた。
「ブランドは、要は看板だ。広告代理店にお金を払って任せればいい」
こんな中でアーカーは次のように言って、マーケティング界に大きな衝撃を与えた。
「ブランドは商品や人材と同じで、資産価値がある。ちゃんと戦略を考えるべきだ」
一見すると「単なる看板」に見えるブランドに顧客が絶大な信頼を寄せるのは、その看板の背後に大きな資産があるからだ。アーカーはこの資産価値のことを「ブランド・エクイティー」と名づけた。ブランド構築ではブランド・エクイティーを築き、高め続けることを目指すべきだ。そのためには次の3つが必要だ。
(1)ブランドの認知(Brand Awareness)
無印良品の文具を「悪目立ちしないオシャレな文具」と認知した人は、文具を買うときは無印良品を選択肢として考えるようになる。このように顧客がブランドを認知すると、購入の際に思い出してもらえる可能性が高まるし、ブランドに対する好感度や態度も高まる。
(2)ブランド連想(Brand Associations)
多くの消費者は「無印良品」と聞くと「無駄を排したシンプルなデザイン」を連想する。このように、そのブランド名を聞いた瞬間に消費者が脳内で連想するものが「ブランド連想」だ。このブランド連想のおかげで、顧客は商品を買い続けるようになる。
(3)ブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)
無印良品の熱狂的ファンは、衣服も食器も冷蔵庫も無印良品で揃え、自宅を無印良品で埋め尽くす。常にそのブランドを選ぶようになった顧客は滅多に行動を変えない。競合他社にとってそのロイヤルティを断ち切るのは至難の業。これが「ブランド・ロイヤルティ」だ。
無印良品は「感じ良い暮らし」を実現するために、「シンプルにして簡潔、必要にして十分」であることを目指している。このように作り手がそのブランドに「こうなって欲しい」と強く願うイメージを言葉で表現したものが「ブランド・ビジョン」だ(ブランド・アイデンティティともいわれる)。明確なブランド・ビジョンは事業戦略を的確に表現し、競合と差別化をする源泉になる。さらに社員も顧客からのブランド・ビジョンへの共感で活気づき、アイデアを生み出すようになる。逆にブランド・ビジョンがないとブランドは迷走し始め、戦略や施策も一貫性を失ってしまうのだ。 ではこのような強いブランドを創り上げるには、どうすればいいのか?