文春オンライン

バルミューダの家電はなぜ独り勝ちするのか? “市場調査”に頼った商品開発が失敗するワケ

「マーケティングの基本に忠実なバルミューダ」

2021/02/18

source : 文藝春秋 digital

genre : ビジネス, 企業, 経済

note

問題は市場飽和ではなく、努力不足

 私はあらゆる業界の数多くのビジネスパーソンから、何度もこんな話を聞いてきた。

「ウチの業界は市場が衰退しているので、厳しいです」

 レビットは、「これは単なるマーケティング努力の不足であり、要は市場への責任転嫁だ」と実に手厳しい。

ADVERTISEMENT

写真はイメージ ©️iStock.com

 考えてみれば、あらゆる産業は例外なく成長産業だった。たとえばドライクリーニングもかつて超成長産業だった。19世紀のウール衣料全盛期、ドライクリーニングは衣料を傷めず簡単に洗う唯一の方法だった。しかし今は成熟市場だ。同様に現在低迷しているあらゆる業界も例外なく、かつては成長産業だった。しかし商品を放置したままだと必ず陳腐化する。原因は市場の衰退ではない。マーケティング努力の失敗なのだ。

 私たちの身近なコンビニも30年前から「コンビニ市場は飽和した」と言われ続けてきた。しかしコンビニ業界は「コンビニ飽和論」をはね除け、1990~2019年の29年間で国内売上と店舗数は実に4倍も成長した。コンビニが「単なる小売業」に甘んじなかったからだ。公共料金支払い、宅配便取次、銀行ATM設置、冬のおでん販売、高品質なPB商品開発、セブンカフェのようなレギュラーコーヒー提供など、コンビニは「顧客に便利な存在になる」ために常に変わり続けてきた。

写真はイメージ ©️iStock.com

 このコンビニの進化こそ、あるべき姿のお手本だ。消費者の不満を見つけ、その不満を解決する努力を続ければ、成長し続ける。その努力をやめた時に、市場は飽和する。要はそれだけのことなのだ。そして消費者の不満は、必ずどこかにある。消費者の不満を見つけ、自分の手で成功の要因を創り出すしかない。ではどうすればいいのか?

 ここで多くの企業は「市場調査しよう」と考える。これはうまくいかない。