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飽和する照明市場で、バルミューダが高級家電を投入できた理由

 照明器具メーカーのホシさんは市場調査の資料を見て、新商品企画で悩んでいた。

「うーん。照明市場はマイナス成長か。白熱灯からLEDにシフトが進んだから、今後はLEDに完全集中するしかないなぁ。でも価格競争は避けられないな。厳しい……」

 これぞ、まさに「ウチの業界は市場が衰退しているので、厳しいです」状態である。

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 BALMUDA The Lightはこの飽和した照明市場に投入され、定価40,700円と超高価であるにも関わらず市場で高く評価されている。

 The Light開発のきっかけは、子どもたちが絵や文字を書き始めると机に顔を近づける姿を見たバルミューダの寺尾玄社長が「目が悪くならないか?」と心配したことだった。

©️iStock.com

 寺尾社長は「世界で一番、物がよく見えなければならない現場はどこか」と考えた末、手術灯と巡り会った。通常の照明は手元に影が落ちるが、この照明は手術灯の技術を使っており、影が出ない。さらに通常のLED照明はブルーライトで目への刺激が強いが、この照明は太陽光で目が疲れない。

 こんな製品は、市場調査レポートを熟読しても生まれない。市場調査は過去のデータだ。既存商品に対する顧客の好みは把握できるが、この世にまだ存在しない製品のウォンツ(潜在的なニーズ)は把握できない。売れる製品は、顧客の「これが欲しい」というウォンツを具体化することで生まれる。このウォンツは、過去のデータの集計値である市場調査ではなく、マーケターの洞察でつかむものなのである。