ジャズに目覚めた仙台出身の若者・宮本大が、世界一のサックスプレーヤーを目指す『BLUE GIANT』シリーズ。シリーズ累計650万部を超える本作は、日本編(通称「無印」)から始まり、昨年秋にはヨーロッパ編『BLUE GIANT SUPREME』最終第11集とアメリカ編『BLUE GIANT EXPLORER』第1集が同時発売。連載中の「ビッグコミック」で大のアメリカ行脚は続いており、2月26日には待望の第2集が発売される。
矢のように空を貫くエネルギッシュな演奏で、一貫した夢を追い続けてきた若者。そのブレないスピリットはどこから来るのか? ここに混迷の時代を生き抜くヒントがあるのではと、作者の石塚真一さんに前後編にわたって話を聞いた。(全2回の2回目。#1を読む)
ノーベルマンガ賞を貰って、ストックホルムに行きたい!
――キャリアについてもお伺いしたいと思います。石塚さんは22歳から27歳までアメリカに留学して、ロッククライミングをしながら気象について学ばれていたんですよね。デビューは帰国後、28歳の時だそうですが、その頃のことを覚えてらっしゃいますか?
石塚 はい。僕は本質的になまけものなので、志を高くしないと連載すら取れないと思っていて。デビュー時に決めたのは、「日本一のマンガ家になるぞ!」「ノーベルマンガ賞ができて、それを貰うんだ!」。あぁ、ノーベル賞取りたいなー、ストックホルム行きたいなー。
――その時はぜひ授賞式の壇上でサックスを吹いてほしいです。
石塚 いいですね~(笑)。こういう一見バカバカしい夢をずっと持ち続けていたいんです。一緒に話を作っているNUMBER8さんも、ノーベル賞と聞いて笑ってくれましたし、僕のマンガを読んでくれる人も少しずつ増えてきて、目標を高く設定しておいて損はなかったと思っています。
僕ももうすぐ50歳になりますが、もっともっと夢を持ちながら、課題をクリアしていきたいですね。いまって世の中の流れが早いじゃないですか。うちはまだ紙を使っているんですけど、ギリギリだなと思っていて。絵も変えていきたいんです。不変と変化、その両方に対応していかないと。
――デビュー作の『This First Step』(短編集『東京チェックイン』収録)を読ませていただきましたが、相当絵が違いますよね。
石塚 あれはひどい絵でした。フキダシも体の周りにエクトプラズムが浮いてるみたいで。ところが不思議なもので、あの時は、「これが何の賞にも引っかからなかったら出版業界を疑おう」ぐらいに思っていたんです。どうかしてましたね。
それでも賞(第49回小学館新人コミック大賞入選)をいただいて、それからが大変でした。マンガの描き方本を買ってきてイチから勉強して。水曜の夜に会社が終わってから小学館に行って、マンガのイロハを教わって。