会社が倒産して、「本当にやりたいのはマンガだ!」って
――その会社が倒産したそうですね。そこから本格的にマンガの道へ?
石塚 会社勤めをしていた頃からマンガで勝負したいとは思っていたんですけど、会社がつぶれて、諸先輩方が就職の心配をしてくれたわけです。「石塚、次何やるんだ?」「ちょっとマンガを」「マンガで食ってくなんて絶対無理!」。それを言われた時、自分が計算度外視で本当にやりたいのはこれだ!って分かったんです。
――会社が倒産したら普通はガーンだと思うんですけど、石塚さんは「今こそこの道!」と思ったわけですね。
石塚 どうもノー天気で。なんせ27歳まで学生やってましたから。
ある大きな企業の面接試験の時もめちゃくちゃ怒られました。履歴書に「趣味:登山」って書いたんですけど、「この趣味というのは命がけでやってきたの?」「いえ、なるべく命はかけない感じで」「おまえー、同じ年の日本の若者たちは命がけでがんばってるんだぞ!」。おっしゃるとおりなんです。普通じゃない。
――大のことを変わっているとはいえない?
石塚 僕も変わっているんでしょうね。就職もタイミングで決まったというか。
アメリカでロッククライミングをやっていた時、日本からきた人がいて、知人の紹介で僕がクルマを出したんです。一緒にキャンプをしている時、「日本に帰ってから就職先は決まってる?」「まだです」「じゃあウチ来いよ」「お願いします!」就職活動終わり、みたいな(笑)。それが潰れちゃった会社なんですけど、先輩方はみんな優しく色々教えてくれて、感謝してますね。
人も、人が話す言葉も本当に面白いじゃないですか
――いろんな人に怒られたエピソードが出てきますけど、イラッとすることはないんですか?
石塚 ごめんなさいとしか思わないですね。子供の頃からずーっと怒られ人生ですけど。
母は学校の先生だったんですけど、いつも僕がいたずらして追っかけられてたな。茨城の実家近くに田んぼがあって、その周りをぐるぐる廻っているうちにおふくろが笑い出しちゃって。Mじゃないですけど、怒られると正してもらっている安心感があるんです。見捨てられていない証拠というか。
いままで、周りにもあんまイヤな人っていなくて。イヤな思いをしたことがないわけじゃないですけど、その人も理由があってのことだろうと思いますし。
――『BLUE GIANT』にも、本当にイヤな人ってほとんど出てこないですよね。一見イヤな人でも後から真意が明らかになって。人を信じる力が強いんだろうなと思います。ジャズに対してもそうですけど。
石塚 そうですね。人も、人が話す言葉も本当に面白いじゃないですか。大も人間が好きなんでしょうね。