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「才能なんてないと思いたい。でも…」累計650万部超え、“アツすぎる”音楽マンガ作者が語る「ゾッとする残酷さ」

『BLUE GIANT EXPLORER』作者・石塚真一さんインタビュー#1

2021/02/25

 ジャズに目覚めた仙台出身の若者・宮本大が、世界一のサックスプレーヤーを目指す『BLUE GIANT』シリーズ。シリーズ累計650万部を超える本作は、日本編(通称「無印」)から始まり、昨年秋にはヨーロッパ編『BLUE GIANT SUPREME』最終第11集とアメリカ編『BLUE GIANT EXPLORER』第1集が同時発売。連載中の「ビッグコミック」で大のアメリカ行脚は続いており、2月26日には待望の第2集が発売される。

 矢のように空を貫くエネルギッシュな演奏で、一貫した夢を追い続けてきた若者。そのブレないスピリットはどこから来るのか? ここに混迷の時代を生き抜くヒントがあるのではと、作者の石塚真一さんに前後編にわたって話を聞いた。(全2回の1回目/2回目を読む)

石塚真一さん

異文化交流をテーマに試行錯誤を重ねたヨーロッパ編

――昨年、ついにジャズの本場アメリカ編に突入しましたね。ところで、大の荷物ってヨーロッパに渡った時も、今回の渡米も、サックス以外はバックパックひとつだけじゃないですか。あの中には何が入っているんですか?

石塚 先日、渡した原稿では、でっかいマーケットでいろんなものを買っていたので、最低限の服と身の回りのものぐらいなんでしょうね。でも、それでこれちゃってた。そういえば、『岳』(北アルプスでテント暮らしを続ける島崎三歩が主人公の山岳救助物語)の主人公もあまり所有しないタイプでした。

――いずれ大が広大なアメリカを横断する中で、三歩さんみたいにガスバーナーでコーヒーを沸かすシーンが見られますかね?

石塚 そうですね。テントを張ってキャンプするかもしれません。若さの特権というか、お金がないことの逆利用というか、僕自身そうやって旅することが好きだったので。それにしても、アメリカに辿りつけてよかった。

――と言いますと?

石塚 「シュプリーム」のテーマは異文化交流だったんですけど、完全には分かりあえない部分もあるわけじゃないですか。僕自身、ヨーロッパに長く滞在したことはないですし、それでも大は突き進むわけですよね。試行錯誤の連続でした。

 

――そもそもなぜアメリカの前にヨーロッパだったんですか?

石塚 ジャズの本場と言えばアメリカですが、ここでアメリカに行くと話がすぐ終わっちゃうなと思って遠回りしました(笑)。というのは僕の話で、大は自分なりの道を行きたかったんですかね。正直、この若者は僕と考え方が違うところがあって、行動が掴めないことがあるんです。

――では、お話を作るときはどうやって?

石塚 担当編集者がずっと一緒で、「シュプリーム」からNUMBER8さんという名前になってストーリーディレクターとして入ってもらっているんですが、「大ならこうするんじゃないか?」とか、「ここはピッチャーが160キロ投げた感じじゃないか」みたいに二人でスポーツに置き換えたりしながら作っています。

 大が行きたい方向や彼の気持ちが分かった時はすんなりいくんですけど、僕は大概迷っているので。マンガ家と編集者の関係はよく餅つきに例えられますけど、まさに共同作業ですね。