――いま一番行ってみたいのはどこですか?
石塚 ナイアガラの滝。案外、アメリカに居た頃は見てなくて。カナダやアフリカも行ってみたいし、日本も西の方にまだ行ったことがない所がたくさんあります。
――地方のジャズバーも良さそうですよね。
石塚 そうですね。以前、友達のお見舞いで弘前に行ったんです。夜、ジャズバーに入ってみたら、おじいちゃんがひとりでやっている店で。昔のレコードをかけるのかと思いきや、ロバート・グラスパー(‘78年生まれのアメリカのジャズピアニスト)の最新アルバムを「これが、かっこいいんだよ」ってかけてくれたんです。弘前のじいさまがアップデートしてるんだから、僕も止まってる場合じゃない!と思いましたね。
若い頃は「ちょっと危ない人」だったかもしれない
――石塚さんって一見穏やかですけど、熱い一面が仄見えますよね。描かれる作品も一見平熱だけど、実はめちゃくちゃ熱い。まさに青色巨星というか。
石塚 たしかにだいぶん攻撃的ではなくなったかな。
――昔は穏やかではなかった?
石塚 もうちょっと危ない人だったかもしれない。危ないというか、デビューしたての頃、親友に「俺はこうなる!」みたいなメールを送ったらしいんです。それをずっと後になって見せられて、恥ずかしー、死ぬー!と。地獄みたいな話ですけど、その友人には「絶対削除しねーから」って言われてます。
――ヒドい(笑)。
石塚 まあ、周りの友達も明るいヤツばかりです。アメリカの人がBABYMETAL(アイドルとメタルを融合させた日本人ダンスユニット)を見る動画があって、みんなすごいリアクションなんです。それを友人が送ってきてくれて、「観客のリアクションを描く時に役立つでしょ?」って。有難いですよね。スタッフもみんな明るくて。
――いま何人体制なんですか?
石塚 僕も入れて5人です。
――皆さんもデビューを目指されているんですよね?
石塚 僕のところはそれを常に意識させるようにしていて、ほぼみんな出て行ってますし、連載を取った子もいます。本当は、スタッフが入れ替わるのって大変なんですけど、「あそこに行けばデビューできるみたいだよ」となれば、次に来てくれる子もいるのかなと。
マンガ家で居続けるために必要な資質とは?
――石塚さん自身がヒット作を描き続けていらっしゃるので、マンガ家で居続けるのに必要な資質がある程度わかっていらっしゃるというのもありそうです。
石塚 僕なんかまだまだですけど、「どういう人がマンガ家として続いているか」みたいな話はスタッフたちともよくします。どの業界でもそうだと思うんですけど、やっぱりいい人じゃないとダメだよなとか、明るくいようよとか。
最初は「こんな世界なんて終わってしまえばいい」みたいなマンガを描いていた子も、うちにアシスタントに来るようになってから明るいものを描くようになったり。僕は暗い作風のものも否定しないんですけどね。
――石塚塾、すごいですね。
石塚 あとは、編集さんに作品を見てもらって何度でも撃たれよう。むしろ、撃ってくれみたいな気持ちで持っていこうっていうのと、スピードをあげようって話はします。