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病院の総ベッド数のうち、コロナ対応に使われているのはわずか2%

 さらに新型コロナウイルスに感染した自宅療養者は全国で3万5000人に上る。入院が必要と診断されたが入院できず、やむを得ず自宅にいた結果、死亡してしまうケースが出るなど、緊急事態宣言が出ている11都府県のうち7都府県では少なくとも18人が療養中に死亡した。また、重症を脱し、症状の落ち着いた患者の転院先が見つからず、新たな重症患者を引き受けることができない事態が生じるなど、「コロナ病床の不足」は深刻な社会問題となってきている。

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 どうすれば十分な数のコロナ病床を確保できるのか。問題の根本は「一部の病院やスタッフに負担が集中していることだ」と指摘するのは、元厚生労働省医系技官の木村盛世氏だ。

「新型コロナ患者を受け入れている医療機関、そしてその医療従事者は非常に厳しい状況にあります。しかし、“コロナに対応していない病院”にはまだ余裕があります。実は日本の病院の総ベッド数は約160万床もあるのですが、そのうち現在、コロナ対応に使われているのはわずか2%の約3万床です。この“使われていない98%の病床”をどううまく稼働させるかが、今後の重要なポイントなのです」

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コロナ対応において病床数だけに注目するのは適切ではない

 その“使われていない98%の病床”の多くは、中小規模の民間病院やクリニックのものだ。現在、コロナ患者を受け入れているのは公的病院や公立病院が主で、「民間病院」でのコロナ患者受け入れは思うように進んでいない。この「民間病院」は全病院の8割を占め、病床数も全体の6割近くを占めているのだ。

 病院経営コンサルティングのグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の渡辺幸子代表が、その理由を説明する。

GHC渡辺幸子社長

「その背景には二つの理由があります。まず、各自治体が、日本の8割を占める民間病院にコロナ受け入れを要請することしかできず『指揮命令』することが困難なことがひとつ。もうひとつは、日本は病院・病床数が多すぎるがゆえに、医師や看護師などの人的資源が分散し、一病床あたりの医療資源が非常に薄い状態で治療せざるを得ない状況にある点です。そのため、ケアに手がかかるコロナ患者を診る場合、病床はあっても医療者が足らず、病院毎にコロナ患者用に確保できる病床数が限られてしまうという事情があるのです。

 コロナ患者を受け入れる場合には、専⾨の治療に対応できる医師の在籍が必要ですし、看護師も通常より2~3倍の人数が必要になります。重症患者の対応では人工呼吸器や人工心肺装置ECMOなど高度な医療機器と集中治療室、そしてその治療にあたる集中治療専門医も欠かせません。

 コロナ患者の治療にはこのように重症度に応じた医療提供体制の条件を考える必要があります。中等症までのコロナ患者受け入れには医師・看護師の体制整備のために少なくとも病床数200床以上の規模の病院であることがひとつの目安になると考えます。その条件を満たす病院の数は、私どもの推計では、民間病院全体のわずか7%の469病院です」