コロナ患者を受け入れると、経営が成り立たなくなってしまう
しかし、その7%の民間病院でも、コロナ患者を受け入れるかどうかの対応は分かれている。都内でコロナ患者を受け入れる民間病院の医師が打ち明ける。
「民間病院でコロナ患者の受け入れが進まないのは、まず第一に、コロナ患者を受け入れると、経営が成り立たなくなってしまうからです。われわれも患者の命は救いたい。しかし、コロナ患者を受けいれる措置を講じるだけの金銭的余裕は今の民間病院にはとてもない。コロナ患者を診たくても診られないというのが実状です」
受け入れた病院の24%、受け入れていない病院の17%が収益減
前出の渡辺氏がデータを挙げて病院の「窮状」を説明する。
「コロナ禍では、コロナ患者の受け入れに拘わらず、多くの病院の収益が大幅に減少しているという現状がまずあることを理解すべきです。私どもが全国の334病院を対象にした分析調査では、減少幅がピークだった第一波の2020年5月の入院収益減少率は、2019年5月と比べて、コロナ患者を受け入れている病院が24.0%。一方、コロナ患者を受け入れていない病院でも入院収益は17.1%減少でした。
つまり、もともと35%の民間病院の経営が赤字である状況の中、コロナ禍でさらに経営が悪化した。第一波の時は、コロナ患者を受け入れなくても、病院の収益は減ったが、コロナ患者を受け入れると収益減がさらに拡大したのです。コロナ患者を引き受けるか、引き受けないか、どちらにしても収益が減った理由には、コロナ以外の感染症(肺炎、インフルエンザ、ウイルス性腸炎など)が激減したことや、病院を受診することによる感染を恐れて不要不急の受診を控えたことなどがあります。
国は、日本で8割を占める民間病院にもコロナ患者の受け入れを期待していますが、こうした状況では、自治体病院のように経営に補填できる補助金が期待できない独立採算の民間病院に対して『コロナ患者を受け入れよ』と言ってもなかなか難しい話です。