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医師の善意だけでコロナに立ち向かうのは困難

 コロナ患者の対応には専用の病棟や病室を設置するのですが、通常患者との動線を区分けできなければ、一般患者を制限することになり、その分収入が減ります。さらにコロナ患者には看護師を手厚く配置しなければならず、その分通常患者の受け入れを制限することになり、受け入れ患者全体としては減少し、病院全体の経営を圧迫してしまう。さらに、コロナ患者を受け入れるとしたら、クラスターの発生やコロナ対応を恐れる職員の離職などのリスクを抱えることになります。こうした現状においては、『経営が成り立たなくなっても、病院の使命として患者の命を救いたい』という“医師である経営者の善意”だけでは、民間病院がコロナに対応することは困難だと考えられます」

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政府も医師会も、まずはお金の問題で動くべきだった

 こうした民間病院の「窮状」を打開するために、政府は1月に新型コロナ患者用の病床を新たに確保するため、1床当たり最大1950万円を助成する措置を講じた。また、厚労省は1月22日にコロナから回復した患者の転院を促すため、回復後の患者を引き受ける病院への診療報酬を上乗せすると発表した。入院料に最大90日間、1日あたり9500円を上乗せする。だが、これらの措置によって民間病院経営者がコロナ患者受け入れによる経営悪化リスクをカバーできると判断するかどうかは未知数だ。前出・木村氏は「国の責任の重さ」を指摘する。

「日本の病院は、民間病院が8割ですからコロナ危機に対処するには、民間を含めた医療を総動員しなければなりません。だから政府も医師会も、まずはお金の問題で動くべきでした。ところが、昨年の最初の緊急事態宣言後あたりから、様々なアイディアが民間から出ていたにもかかわらず、国は全く対策を打ち出せませんでした。

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 しかし、今からでも遅くはありません。政府予算には5兆円の予備費がありましたし、第三次補正予算でも約19兆円が上乗せになりました。そこからコロナ患者を受け入れた民間病院の損失補填ができるようなさらなる規制緩和を進めるべきです」

東京都医師会尾崎会長 ©AFLO

 菅首相は会見で明言したように、医療現場への適切な財政支援を急ぐべきだろう。

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