本当にすぐ出来ちゃうんだよ(笑)
コンピューターがメインになって以降は、家で完パケることも可能になった。でも、映像とのマッチングを確認した上でプロデューサーが現場でOKなりNGなりを判断するから、作り直しになる可能性がある。
やっぱり、基本的にはスタジオに出向いて、現場で曲を作らなくちゃならない。まあ、俺はそれなりに経験を積んでたんで、作り直しになることはまずなかったんだけどさ。本当にすぐ出来ちゃうんだよ(笑)。
俺の場合、CMのレコーディングはほとんど午前中に行っていた。CM音楽は、たいがいは15秒で長くても30秒、ロゴだったら下手すりゃ2秒だから、朝10時から始めても11時前には終わるんだよ。そこからゆっくりお昼食べても、午後はまるまる空く。一日が有効に使えるじゃん(笑)。
時には、別の何人かが音楽を作ったけど立て続けにNGを食らっちゃって、最後の最後に俺のところに持ち込まれたというケースもあった。打ち合わせした翌日に納品するみたいな日程でさ。業界用語でいうところのケツカッチンってやつ。
何とか間に合わせたサッポロビール「黒ラベル」
それでよく覚えてるのは、サッポロビール「黒ラベル」のCMだね。99年の暮れ、12月29日ぐらいに突然オファーが来たのよ。
その時点で、浴衣を着た山崎努と豊川悦司が温泉の卓球場で闘う映像は完璧に仕上がっていた。サッポロは箱根駅伝の筆頭スポンサーで、毎年、1月2日の往路中継では必ず力の入った新作CMを披露していたから、それまでに音入れを終わらせなきゃならない。綱渡りもいいところだけど、何とか間に合わせたよ。
あの曲は、レニー・クラヴィッツの「Are You Gonna Go My Way」の有名なギターのリフを逆から弾いてみたらどうだろうというアイデアから生まれたんだ。