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 もちろん、コロナと鼻づまりの両方を持っているケースもあるが、その場合は点鼻薬などで鼻の炎症を消してもなお嗅覚障害が残るので見当をつけやすくなる。

 ちなみに新型コロナの症状としてよく知られているものに「味覚障害」がある。木村医師によると、これは嗅覚障害と同じ仕組みで起きる症状とのこと。ウイルスが細胞のレセプター(受容体)に結合して症状を起こすのだが、そのレセプターが舌にあれば味覚障害、鼻のレセプターとくっ付けば嗅覚障害になる。

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一番厄介なのは…

 一番厄介なのは、花粉症の人がコロナに感染していて、しかもコロナの症状は出ない、つまり「コロナは無症状の花粉症の人」だ。

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 たとえコロナは無症状でも、花粉症なら花粉には反応してくしゃみをする。くしゃみは咳の10倍以上の飛沫を飛ばすので、マスクをしていても周囲にコロナウイルスを感染させるリスクが高まる――というわけだ。

「無症状だと当人にコロナに感染した自覚がないので、マスクをしているとはいえ人と接することもあるでしょう。くしゃみをしなくても、モノを介しての接触感染の危険性もある。花粉症というアレルギー症状が新型コロナという病気をマスキングしてしまうことで、当人にとっても周囲にとっても危険な状況ができあがっていくのです」

一番厄介なのは「花粉症の人がコロナに感染していて、しかもコロナの症状は出ない」パターン ©iStock.com

 じつは昨年の春頃に、このケースが疑われる症例が散見されたというのだ。

「花粉症の症状がピークを迎えるのは3月頃ですが、昨年のその時期はまだコロナについて詳しく分かっていませんでした。ただ、嗅覚障害と発熱を訴える患者さんの中に、花粉症の症状とはちょっと違うな、という症例を診たという話は耳鼻科医同士の会話で出てくるのは事実です。嗅覚障害はあるのに鼻の粘膜が腫れていないケース……いま思うとあれはコロナだったのかも、って……」

 冒頭で木村医師が呼びかけた「花粉症の人は早めの受診を」というメッセージは、こうした事態を未然に防ぐためのもの。早めに薬を使って花粉症の症状が出ないようにしておくことで、万一コロナに感染した時はコロナ特有の症状だけが浮かび上がるようにすることができる。

「例年は花粉が本格的に飛散して、症状が出始めてから医療機関を受診する人が多いのですが、いまのコロナ禍ではそれを前倒しにすることが重要です。そもそも花粉症の薬は、症状が本格化してからだと効き方も小さくなるので、発症前からあらかじめ治療をしておくのが理想的。花粉の飛散がピークを迎える前に、ぜひ治療を始めてほしい」