花粉シーズンに耳鼻科を受診する「リスク」は?
とはいえ、ただでさえ混み合う花粉症シーズンに、耳鼻咽喉科を受診してコロナに感染する危険性はないのだろうか。
「もちろん感染リスクはゼロではありません。ただ、耳鼻科は飛沫を浴びる危険性が高い診療科なので、日本耳鼻咽喉科学会の呼びかけで感染防止対策が徹底されています。換気や患者同士の距離の確保、コロナが疑われる人が受診した際の棲み分けなどの対策に力を入れているので、これまで病院の耳鼻科外来や耳鼻科診療所を感染源とするクラスターは報告されていません」
そもそも今年はコロナの影響で、カゼやインフルエンザなど一般的な急性感染症で医療機関を受診する人が減っているので、花粉症のピーク時でも例年ほどの混雑にはならないだろうと予想されている。とはいえ、こればかりはピークを迎えてみないとわからない。できることなら安全性を高めるためにも、「分散受診」を心がけたい。
進む医療機関の対策
もう一つ、コロナ禍によって医療機関の対応にも変化が生じている。予約システムの導入やオンライン診療を行う医療機関が増えており、これも感染防止に役立っているという。
「完全予約制にすることで待合室や会計で患者同士の接触を避ける仕組みを整えているところも増えたし、オンライン診療ならさらにリスクは下げられます。花粉症の場合、最初だけは対面診療が必要ですが、2回目以降はオンラインでも診察はできます。特に毎年花粉症で治療を受けている人なら薬を2~3カ月分の長期処方することも可能です」
受診のために外出する回数は少なくできるのだ。
また、花粉症で目の症状を伴う人もいる。
目を搔いて角膜にキズが付くような重症例は別として、一般的な目のかゆみに使うような点眼薬なら耳鼻科でも処方はできる。万が一ウイルスがついている手で、知らぬ間に目をこすると、目の粘膜を通して感染してしまう可能性がある。目の症状に対しても、事前のコントロールが必要だ。
コロナの影響であまり話題になっていないが、花粉症治療薬も進化している。
「重症の花粉症には、オマリズマブという生物学的製剤(化学的な合成物質ではなく生物由来の物質を原料とするバイオ製剤)が昨年から健康保険で使えるようになりました。1回の注射で数万円と薬価が高額なので簡単に使える薬ではないけれど、受験生のように“ここ一番”というときには利用価値はあります」
花粉症治療は一人ひとりの症状や生活背景に合わせた対策が可能な疾患です。
そして、スギ花粉の本格的な飛散まで、もう余裕はありません。
飛散のピークを迎える前に、早め早めの対策を講じてください。