高級車から軽自動車に乗り換えられる感覚
10代でプロになり一時的とはいえぜいたくな暮らしをした後、故障や、チームにフィットしない、思うように力が伸びないといった理由で、所属クラブのランクが下がる。ランクに比例して、収入も落ちてしまいます。それなのに、若くしてスタジアムの眩まばゆい光を浴びた選手は自身のフットボールバブルがはじけたことを自覚できないのです。
「高級車から軽自動車に乗り換えられる感覚が備わっていないと、プロとしてキャリアを積んでいくことはできない」
彼らが生活水準を落とすことができない様子を、私たちはこのように例えます。
ここで、スペインリーグ(20-21シーズン)の構成を、簡単にご紹介します。
1部 プリメーラ・ディビシオン(20チーム)=プロ
2部 セグンダ・ディビシオン(22チーム)=プロ
3部 セグンダ・ディビシオンB(102チーム)=セミプロ
4部 テルセーラ・ディビシオン(397チーム)=セミプロ
5部以下 アマチュア
年俸額の大きさや格差はもちろんですが、例えばJリーグと比べると3~4部のチーム数が大きく異なることがわかります。J3のチーム数は18、4部相当のJFLは16(ともに2020シーズン)ですが、スペインは102、397。つまり、スペインでは、下に行けば行くほど、クラブ間も選手間も、サバイバルの度合いは熾烈を極めます。
収入の問題が八百長を引き起こすことも
けがをしたり、戦力外になったら、収入がゼロになるかもしれないリスクと常に背中合わせ。スペインの厳しいフットボール界を生き抜くことは、薄い氷の上を歩くようなものなのですが、彼らにはその感覚がわからないようです。状況が変わっても、何百万、何千万円という大金が毎月支払われる感覚で生活しがちでした。
期待するような収入を得られない3部、4部リーグに移籍した選手、安定的な報酬を得られない女子選手が、八百長を持ち掛けられやすいようです。1部や2部で何千万円と稼ぐ選手は近寄られません。なぜなら、お金に困っていないからです。女子を含めすでに逮捕された選手もおり、八百長問題は欧州フットボール界では大きな問題になっています。
もうひとつ、彼らの問題を複雑にしているのが、代理人の存在です。
選手のキャリアアップを後押しし、サポートできる素晴らしい代理人がいる一方で、クラブからクラブへと選手を動かすだけの人がいるのも事実です。無論、それが彼らの仕事ではあるのですが、税金や資産管理についてもサポートや教育をすべきとも考えます。