「赤ちゃん売ります」「買います」
「私は今年18歳です。赤ちゃんはいま2ヶ月ですが生まれてからずっと健康。3万元であなたに差し上げます」
党中央機関紙『人民日報』傘下の『健康時報』ウェブ版(2017年7月14日付)が報じたニュースは、こんな書き出しからはじまる。当該のQQ群のメンバーは、赤ん坊を売りたい仲介者と、赤ん坊を買いたい人々だ。かつて2014年2月に、公益組織を自称して有償での養子斡旋を仲介していた複数のウェブサイトが人身売買容疑で摘発されて1094人が逮捕、人身売買の被害嬰児382人が救出される大捕り物があったのだが、同様のサービスは地下に潜り、クローズドなQQ群として存在し続けているらしい。
中国には、農村部を中心に男児を尊重しがちな伝統的価値観があるためか、この手の人身売買コミュで多い書き込みは「女の子売ります」と「男の子買います」だ。『健康時報』によればその価格は3万~7万元(約48万~112万円)。子どもを売りたがる親たちの多くは、望まぬ妊娠をした女性たちである。
同紙が掲載した、2017年6月30日の江蘇省での仲介者の女性と、赤ん坊の有料引取希望者を装った記者とのやりとりは以下のようなものだ。
[記者]あの?
[記者]います?
[記者]さっきコミュを見たら、明日が例の赤ちゃんの出産予定日とか?
[業者]明日ですよ。
[業者]さっき私がコミュにも投稿したんですが、彼女(母親)は私にそう連絡したんです。でも、電話はくれないんですよね。
[業者]変だなあ。
*
[記者]赤ちゃんの戸籍はどうするんです?
[業者]私のIDカードを使って(私が)生んだことにしますよ。
[記者]うわ。
[記者]やりますねえ。
*
[業者]まずはもうすぐ赤ちゃんを生む女性を探すことが大事なんですよね。でも、産みの母親のところに会いに行ってみようなんて絶対に考えちゃ駄目ですよ。そうなった場合、あなたにどういう事態が起きるかは知りませんからね。
[記者]わかりましたよ。
字面を追うだけでも気分が悪くなってくるが、こうした世界もまた中国の社会の裏側には存在しているのだ。