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「処理水問題の風説を放置したことの反省はある」 原発事故収束担当大臣だった細野豪志氏が語る“責任”

細野豪志氏、竜田一人氏対談#2

genre : 社会, 読書, 働き方

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細野 それでもネガティブな情報がいまだに拡散されていることが目に付いてしまいます。

竜田 でも、それもそんなに広がらないでしょう。

細野 以前と比べるとね。しかし、反論したほうがいいのか、スルーしたほうがいいのか、そこは悩むところです。

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東日本大震災のあと ©️iStock.com

甲状腺がんの話を信じる人なんていないだろうと思っていたら……

竜田 いちいちそれを取り上げてしまうことでかえって広がるってことがあるんで、だから、「こいつはもう無視していいや」っていうのをある程度決めたほうがいいんじゃないですかね。一方で、影響力を持つ人間が言い始めたら一応、反論したり釘を刺しておこうみたいな。そういう戦術的な区別というか。

細野 なるほど、線引きと見極めですね。風評に関して私が反省しているのは、初期の段階では荒唐無稽な風説の類を割とスルーしていたんですよ。甲状腺がんの話なんかも信じる人なんてそういないだろうと思っていたら、意外と信じる人がたくさんいて。

竜田 確かに。

細野 処理水の問題にもそういうところがありました。とはいえ、政府は原発事故を起こした側だったから、積極的に反論するのではなく分かっている事実と正しい情報を説明するに留めていました。そうしたら、日本国内で放置されてきた風説をそのまま利用しての反対論を、お隣の韓国の団体や首長までもが言い出した。そのことには反省がありますね。

©️文藝春秋

竜田 デマを取り上げることによって、逆に風評を蒸し返すことがあるので、そこに関しては冷静にやった方が良いと思いますけどね。どうしても感情的になっちゃう。

細野 処理水はちゃんと安全を確認したうえで海洋放出をしましょう、とかですよね。甲状腺検査は過剰診断のリスクがあるから本当に希望する人についてはちゃんと調べますが、全員受ける必要はないですよねっていうこととか。この種の決断は、やっぱり政治とか行政がしなければならないですから。