東京電力福島第一原発の事故から、10年が経った。当時、原発事故収束担当大臣だった細野豪志氏が今あらためて、関係者を訪ね、事故を検証した。原発処理水の問題、放射線の健康への影響、隣接自治体の現在――。それらの事実を気鋭の社会学者・開沼博氏と共に読み解いたのが、『東電福島原発事故 自己調査報告 深層証言&復興提言:2011+10』(徳間書店)だ。同書より、細野豪志氏と、マンガ『いちえふ』(講談社)の作者で、原発作業員でもあった竜田一人氏の対談を抜粋してお伝えする。(全3回の3回目。1回目2回目を読む)

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国が腹を据えてやらないと風評は収まらない

竜田 あの震災瓦礫の広域処理は、ちゃんと事前に計画されていて、こうやりますよと公表して、実際に放射線量を測って、世間に広くリアルタイムで情報公開しながらやっていった。そこまでやってたから、事前にあれほど懸念された風評被害は起こらなかったんですよ。処理水の放出だって同じことなんです。放出しますって言って、当然モニタリングはする。そうやって計画的に公表しながら進めていくことで、風評被害は起きないんじゃないかってずっと思っているんですけど、誰もこれに関して言ってくれない。

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東日本大震災のあと ©️iStock.com

細野 竜田さんとしては、処理水を放出しても大きな風評被害は起こらないとお考えなんですね。

竜田 そんなに心配する必要はないと思っています。ただまあ、多少はデマ流す人たちとか、一部マスメディアが大騒ぎするので、本当はそこを抑えないといけないんですけど、多少騒がれようが、実際の売り上げにはたぶん影響はしない。そう言ってあげたほうが福島の漁業者さんも安心するんじゃないかな。トリチウムがどうのこうのとか、安全だっていうこととかを言うのも大切ですけど、それよりもこの計画、この作業自体が風評被害に結びつく可能性っていうのは非常に低いことを、もっと言ったほうがいいんじゃないかって思いますよ。この視点で何か言ってくれる人が非常に少ないのが、非常に不満で。

細野 マスコミの影響は非常に大きいので、明らかにバイアスがかかっていたり、事実が間違っていたら的確に反論するということは必要ですよね。

※写真はイメージ ©️iStock.com

竜田 それは必要ですね。福島県知事とかもそうだけど、「丁寧に説明を」としか言わない。そこも、もうちょっと何かやることあるんじゃないのと思いますよ。

細野 そこは福島の皆さんよりは政府ですよ。やっぱり国がすべきことです。国が腹を据えてやらないと風評は収まらないですね。